第九十七章 ページ47
意識は保てている。
Aも離していない。
背中が痛く痛むが脚に致命傷はない。
すぐにこの場から逃げないと……。
「……っ」
立ち上がろうとした矢先、足元が映る視界に見覚えのない誰かの靴が映る。
マズイ、と気付いた時にはもう遅い。
見上げると、既に弓矢を背中に担いだその兵士は、刀を振り上げている。
刀を握る手に力が込められたのがわかり、しかし、どうすることも出来ず……
刀が何かを斬る音、そして鮮血が視界を埋め尽くした。
「＿＿大丈夫、ゾム?」
赤い液体をまき散らしながらゆっくりと倒れていく敵兵の後ろ。
そこにはいつもの白い軍服ではなく、対照的な黒い軍服を身にまとった仲間がいた。
「ひとらん……助かったわ……」
「うん、間に合ってよかった」
マスクのせいでよくわからないが、彼は微笑んだ気がする。
その笑顔も、Aの姿を見た瞬間に消え去ったが。
「……ゾムは戻るの?」
「おん、Aを早く手当てしてもらわんと」
「……そっか。うん、大丈夫」
何が、と尋ねる前に彼は一言告げる。
「全員、ぶっ殺すから」
そう言って握った刀からカチャリと音が響く。
未だに血が滴っている刃はこの先の未来を表している様だった。
俺は彼に言う。
「慈悲なんてかけたら、俺がお前を殺したるからな」
「ゾムこそ、Aちゃんにそれ以上何かあったら許さないよ」
わかってる。
慈悲なんてかけないし、これ以上傷付けさせない。
行うべきはただ、蹂躙。
憎き相手への復讐という名の粛清を。
我々のやり方で、奴らを葬ってやるのだ。
「馬、怪我してるみたいだし、こいつに乗っていきなよ」
「……そいつ、ひとらんの」
「こいつも腹立ててんの。そこら辺の馬より早く帰れるはずだから」
協力させてあげて。
そう呟いたひとらんの後ろからこちらに近づいてきたのは真っ白な毛並みの馬。
ひとらんが他のどの馬よりも愛情を込めて育てている、外道丸だ。
外道丸は鼻息を荒くして、蹄で地面を強く蹴っている。
やる気は十二分。
「わかった。頼んだで、外道丸」
一言声をかけてから外道丸にまたがる。
しっかりとした肉付きでとても安定していた。
「じゃあ、あとは頼む」
「心配ご無用」
一瞥して背を向ける。
次に会う時はすべてが終わった後だ。
きっと、また笑い合える日々を取り戻せる。
だから。
だから。
「死ぬなよ……Aっ」
どんどん心拍数が減っていく彼女を、寒さから守るように抱きしめた。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
