第九十五章 ページ45
No side
やっと見つけた彼女の姿を見て、ゾムは言葉を失った。
本当ならすぐにでも駆け寄って力いっぱい抱きしめて、帰ろうと言葉をかけただろう。
しかし、それが出来ず、放心状態になった原因は彼女の姿。
痣や傷の目立つ手足。
ボロボロに破れ、汚れた見慣れた服。
そして。
赤く染まった顔。
それは決して照れているなどの優しいものではない。
血に染まった、顔だった。
その血の出どころは……目。
嬉しそうな言葉を発しながら顔を上げた彼女の両目は傷付けられ、直視するのも躊躇われる。
恐らくもう何も見えていないだろう、と理解したくもない事を嫌でも頭が理解してしまう。
もっと早く助けに来ていたら。
それ以前に、もっと彼女を守っていられたら。
そう考えれば考える程後悔と激しい自己嫌悪に苛まれる。
『ゾム……来て、くれたの?』
彼女の声を聞く度に、心臓を釘で打ち付けられたような痛みがはしる。
来てくれた。
彼女はそう言った。
自分がどれだけ傷つこうと、仲間が助けに来てくれたことが何よりも嬉しいのだと、口角だけが僅かに上がった笑みを浮かべて言う。
「……A」
涙が出そうになるのを抑え、それでも震える声で名前を呼ぶ。
かがんで彼女の顔をまっすぐ見れば、さらに苦しくなった。
彼女がゾムの名前を呼び、腕を伸ばす。
しかしその手は行き場もわからずに空中をさまよっている。
「A……ッ」
悔しさに唇をかみながらその手を取り、優しく、彼女を抱きしめる。
とくとくと伝わる鼓動。
冷え切った肌の温度。
少し震えている身体。
「ごめんな、ぁ……ッ」
抱きしめる。
強く強く。
彼女を安心させるために。
彼女の存在を確かめるために。
「えへへ、くる、しいよ」
心底幸せそうな声。
それを最後に彼女は意識を失ったのか、何の反応もなくなった。
そして。
悲しみに、後悔に蝕まれていた感情は次に取るべき行動の為に消えていく。
殺意。
「グルッペン。Aを確保したで」
＜わかった。よくやった＞
「……それと」
言わなくてもグルッペンはそうするだろう。
しかし、その意思を示しておかないとこの行き場のない感情をどこにぶつければいいのかわからないのだ。
随一の軍事力を持つと言われる我々国。
その国内で最も恐れられ、味方からも畏怖される存在。
脅威と呼ばれるその男はその場に誰かがいたならばたちまち震え上がらせるような低い声を地下牢に響かせた。
「この国を潰す」
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
