第九十四章 ページ44
暗い暗い薄気味の悪い空間。
ここにいる時間は多分一日ぐらいしか経っていないんだろうけど、なんだかとっても長く感じた。
痛む身体。
背中に伝わる冷たい壁の石の感触。
麻痺し始めている感覚は最早悲しみを感じさせない。
でも。
声が聞こえた!
私の名前を呼ぶ彼の声が聞こえた!
嬉しさが胸いっぱいに広がって、寒いはずの身体に温もりを感じる。
鍵が開く音。
ゾムが居ることがわかってからこの音を聞くと怖く感じない。
同じ音なのに、不思議だな。
「……A?」
ゆっくり近づいてくる足音。
聞きなれた靴の音。
私は心からの笑みを浮かべてみる。
『ゾム……来て、くれたの?』
ちゃんと笑えているだろうか。
なんとなく伝わる表情筋の感覚ではそれほど頬が上がっている感じはしない。
でも、ちゃんと嬉しいんだよ?
こんな私を見捨てないで助けに来てくれたんだから。
伝わってるといいなぁ。
「……A」
声が近くなる。
悲しそうな彼の声。
……どうしたの?
もしかして上手く伝わってないのかな?
私はありがとうと伝える。
そしたらちゃんと伝わって、ゾムは笑ってくれるかな?
……でもいつまで経ってもゾムは返事をしてくれない。
傍に居るのに、何も離さない。
重たい腕を伸ばす。
『ゾム……?』
何か話して。
ここにいるって証明して。
私を安心させて。
伸ばした手はまだ何にも触れない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
