第九十二章 ページ42
鬱大先生side
ロボロから伝えられた店に向かう。
こんなに気分が重い外出は久しぶりだった。
煙草をくわえていないと舌打ちしてしまいそうな程。
店の外見は一般的な物。
外に商品を展示していないところをみると高級な感じも感じなくはないが。
ただ、ここがスパイのいた場所だと思うと忌々しくて仕方ない。
扉には鍵がかかっていたので壊して入る。
まだ中に人が居た場合。軍の者でなければ問答無用で始末してもいいと言われているので迷いはない。
中に入ってまず目についたのは割れた瓶の数々。
破片と一緒にドライフルーツも床に散らばっている。
そして、店の端の方に残った血痕。
一瞬使用人のものかと思ったが、違う。
ゾムが彼女にあげたという髪飾り。
それが破損した状態で血だまりの上に落ちていた。
悔しいが、彼女にとても似合っていた髪飾り。
これを彼が見たらどうなるのだろう。
……俺がこんなにも怒りを感じているのだから、きっと計り知れないな。
「鬱様」
部下の一人が店の奥から戻ってきた。
どうやら何も残されていなかったようだ。まあ、当たり前か。
さっさとグルちゃんに報告を済ませる。
ご苦労だったと言った彼の声は威厳こそあるもののやはり焦りも混じってる。
改めて事の重大さについて考えた結果かな。
「お前も出撃の準備をしろ。役割は隠密に敵の後方からの弓を使った遊撃だ」
「了解。……なあ、グルちゃん」
「……なんだ」
「Aちゃん、負傷してるみたいなんよ。結構な血だまりがある」
先程伝えなかったことを報告する。
すぐに報告しなかったのは、グルちゃんがさらに不安になってしまうから。
でも、これは俺だけで抱えるには大きすぎる不安なのだ。
もしも、すでに彼女が殺されていたら……?
考えるだけで体が震える。
そうしてすがるように言った俺にグルちゃんは、同じように不安になりながらもこう言った。
「あいつを信じろ。ゾムを信じろ。仲間を信じろ。絶対に大丈夫だ。どんな怪我だってしんぺい神が治療してくれる。それはお前が一番わかっているだろう」
「……うん。ごめん」
＜謝るな。それより今はするべきことがあるだろう＞
「うん。部隊は少数でいいかな」
＜ああ。それでいい＞
「了解。これより速やかに軍令を遂行致します」
誰も見ていないが、軽く頭を下げてインカムを切る。
一緒にここに来ていた兵士に新たな任務を聞かせ行動を開始。
戦力こそないものの、厄介な相手に溜息をついた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
