第九十章 ページ40
No side
場所を会議室に変え、ピリピリした空気の中で話し合う。
「馬鹿共の始末は後回し。Aの救出が最優先だ」
先程よりは落ち着きを取り戻したグルッペンがいつもよりも低い声で言う。
戦闘を優先しないのはやはり彼女の存在が大きいからか。
手を出してきた可能性がある国は三か国。
ルンズェ、ラギア、メリア。
「メリアは外してええと思う」
口を開いたのは鬱。
「確かにあの女はAちゃんを好いとらんけど、それでもこういう行動を一個人の私怨で起こせるほどの権力は無い」
彼の言うことはもっともだった。
これで候補は二つ。
「俺は、ルンズェやと思う」
どちらも疑わしいと頭を悩ませる中、シャオロンが言い切った。
それは、ただの予想や直感ではなく、確固たる確信。
「メリアのあの女が口走ってた。Aちゃんの過去の話はルンズェ皇帝から聞いた話だって。つまり、あの女は個人的にルンズェ皇帝と親しいんちゃうか?」
そこまでの言葉を聞いて何かを悟ったのはこの中でも頭の切れる三人。
彼らは互いにその推測を語り始める。
「もしも、ルンズェが未だにAを捕えようとしているのなら、情報を集めるための駒が必要だった」
「それがあの女なんやな。わざといい印象を与えないような話し方でもして敵意を向けさせ、見つけやすくさせた」
「そうしたのは去年のパーティーでAちゃんを見かけて、確信を得たかったから。ひと悶着起こさせて本人であることを知った次に取る行動は、早急の確保」
この国内にスパイがいた。
その結論に至るまでは本当に早かった。そこからの行動も。
「ロボロ、この二年間で移住してきた全ての人物を調べろ。Aと接点があればほぼ間違いなくそれだ」
「……わかった」
ロボロは一度大きく頷くと駆け足で部屋を出て行く。
彼の焦りが混じったその行動の理由は、後悔のもの。
自分がインカムをつけていかなくていいと言ったから。
例え事情が事情だったとしても何かしらの連絡手段は持たせておくべきだった。
そう強く後悔する。
恐らくそんな彼が答えとなる人物を見つけるのに十分もかからないだろう。
何万とあるリストの中からある程度の推理をしながら。
「ゾム、単独での行動に備えていろ。時期に命令を出す」
そう言い終える前にゾムは部屋から姿を消す。
普通なら無礼な事なのだが、誰もそれを言わないのは彼にそれほど余裕がない事を知っているから。
＿＿それは、静かなる殺意。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
