第八十八章 ページ38
No side
「……遅い」
落ち着かない様子でその男、グルッペン・フューラーは組んだ腕を指先で軽く叩いていた。
現在の時刻は日付の変わりそうな深夜。
そんな時間まで彼が起きて心配しているのは、彼女。
幹部の一人であるロボロから外出しているという事は聞いていたが、こんなに遅くなると心配するのは当然だろう。
そして、落ち着かないのは一人だけではない。
総統室には幹部全員が集まり、これからの事について話し合っていた。
その話し合いが予想以上に長引き、彼女に謝ろうと探して、まだ帰ってきていないことに気付く。
インカムで連絡しようにも今はロボロが預かっており不可能だった。
そのまま待つこと数時間。未だに彼女は帰ってきていない。
「……トントン、手の空いている兵を」
「んなこと出来るわけないやろ」
「……じゃあ俺が探しに」
「アホか」
「否定してばかりだな、心配じゃないのか」
「心配に決まっとるやろ。でも、必要以上のお節介は迷惑や」
「……必要以上のお節介?仲間を心配することのどこがお節介なんだ」
「あんた、俺達が今Aにどう思われとるか知らんのか?ただでさえ嫌われてんのにこれ以上嫌われて何になるんや」
「嫌われる覚悟はしている。嫌われることを恐れて何もしない奴は黙っとけよ」
「……は?」
「まあまあ、グルちゃんもとんちも落ち着いて……!」
普段そういう役割ではない鬱が仲裁に入る程、この状況は今までとは違った。
心配。焦り。罪悪感。後悔。
それらが等しく全員から落ち着きを奪う。
そして、トップの二人の口喧嘩が一旦収まり、全員が再び黙った時だった。
「……なんや、廊下が騒がしいな」
この場の誰よりもそういうことに長けたゾムがちらりと扉の方に目をやる。
それを追って他の幹部たちの視線もそこに集まった。
微かに聞こえるのは焦った警備兵の声。
その声は徐々に近づいてきている。
扉に一番近かったひとらんが扉を開け、外を確認する……前に。
派手な音を立てて開かれた。
「はぁっ、……そうと、閣下……!!」
その女は数いる使用人のうちの一人。
本来ならノックも事前の許可も無く総統室に入れば懲罰物。
それでも、誰もそれを怒鳴りつけなかったのは、その女の姿が理由だった。
ショートボブの髪は乱れ、服はボロボロに破れ、至る箇所から血を流している。
一部の幹部にとっては見覚えのある人物。
……Aと親しい人物。
「A、様が、敵国に拉致されました!!」
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
