第八十七章 ページ37
男性とショートボブさんが消えていった店の奥から何かが割れるような、大きな音が聞こえた。
何事かと思い、向かおうとした時。
「逃げて下さい、A様ッ!!」
血相を変えたショートボブさんが走ってきて、私にそう叫んだ。
逃げて下さいと、叫んだ。
私は一瞬理解できずに固まってしまう。
しかし、嫌でも理解せざるを得ない。
……私の後ろから感じる、明らかな敵意によって。
『あ"っ……』
そして私は遅すぎたのだ。
気付いた時にはもう既に壁に押し付けられ、首を掴まれ、持ち上げられていた。
誰に?
そんなの一人しかいない。
でも、誰が信じられる?
ごく普通の女性が、私を片手で持ち上げられるなんて。
「貴女は、誰の役にも立てやしない」
”私の知る女性だった人”はまるで感情を無くしたような声で告げる。
言葉に連動するように強く締められる首。
苦しくて苦しくて、その人の腕を掴んだけど引き離す事は到底不可能で。
掠れた声を出しながら、ただ自分の意識が暗くなっていくのを感じた。
「A様!!」
ショートボブさんの声。
そしてガラスの割れる音。
緩められたその人の力。
私は崩れ落ちるように床に倒れた。
不十分だった酸素を体内に取り入れようと何度も咳き込み、息をする。
視界の端に見えたガラスの破片。彼女が投げてくれたのだろうか。
「逃げて下さい!!!!」
彼女の悲鳴混じりの叫び。
私はようやくそれに従って立ち上がった。
入口の扉へふらつきながら駆けて、体重をかける。
しかし、ビクともしない。
鍵がかかってる。
そのことを理解できても、混乱している今、ただ扉を揺らすことしか出来ない。
『開いて、なん、で……!!』
「ふふ、逃がすわけないじゃない」
『……!!』
頭を軽く振りながら、その人は不気味に笑った。
逃げなきゃ。
その一心で私はその人から距離を取る。
こけそうになりながらも、何処か、抜け道を探して。
奥では未だに大きな物音。
彼女も危ないのに、私が早く助けを呼んでこないといけないのに。
今日に限ってインカムが無い自分の無能さを本当に恨めしく思う。
「知ってた?この建物って、防音なのよ」
はっきり聞こえたその言葉。
同時に、カシュッという音が二度。
『……ッ』
そして倒れていく自分の身体。
「サイレンサーで音を小さくする必要は無いんだけどね」
「殺すなよ?」
「わかってる。脚を撃っただけよ。それより、もうひとりは?」
「気絶」
「そう」
……あぁ、ごめんなさい。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
