第七十章 ページ20
随分と高くなった秋の空。
あどけなさの少なくなったハープの音が響いていた。
一週間に一度、三十分という短い練習時間しかできていなかったけどなんとか形にはなってきている……と思いたい。
今日は二時間ほど時間を作ることが出来た。
こんなに長く練習できるのはあの日以来。
(早く曲を通して弾けるようにならないとな……)
私は決めた曲を完璧に弾けるようになるまで別の曲は弾かないというめんどくさい性格みたいだから。
曲全体からみて八割ほどだろうか。
そのぐらいは弾けるようになっている。
……かろうじてのところだらけだけど。
最初から弾けば終わるまで十分ある結構長い曲なので部分練習だ。
・
練習開始から五分が経った頃、開けていた窓から彼が現れる。
「ちっす」
『今日も来たんだね。飽きないの?』
「んー、飽きん」
当たり前のように床に座った。
もうすっかり見慣れた光景。
いつからかゾムが窓から入ってくることに驚かなくなって、ゾムがいることが普通になっていた。
彼は私が練習している間、何をするわけでもなくただ耳を傾けているだけ。
それがとても安心させてくれた。
「たまには外で弾いたりしいひんの?」
それもいいかもな。
とっても気持ち良さそうだ。
でも、私がいつも部屋で弾くのにはちょっとした理由があった。
『部屋でこうして弾いてたら、ゾムが来てくれるから』
「……!」
『そんな気がするから、ね』
身に付いてしまった習慣。
ハープの練習イコールゾムとの時間。
ゾムは私の言葉に照れたようにそっぽを向いた。
「気がするじゃなくて、絶対や」
『え?』
「絶対、来るから」
まっすぐ伝えてくれるその姿が、意地を張る子供みたいで微笑ましい。
バカにしてるつもりはないよ?
ただ、こういう子供っぽいところが可愛らしく思えるだけだ。
……これをバカにしてるって言うのかな?
私は微笑みを返して練習を再開する。
こうやって聞いてくれている以上いつまでも弾けないのは申し訳ないもん。
この曲を完璧に弾けるようになる頃。
その時も、今と変わらず過ごせているだろうか。
ちらりと窺った、目を閉じた彼の顔を見て、私は思う。
＿＿＿＿可能性は、五分五分だ。と
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
