第六十四章 ページ14
緩やかに戻った意識。
目を瞑ったままその感覚を感じる。
目を開けなくても視界は白く明るく、朝であることを理解できた。
今日は晴れなのかな、と思ったが静かな空間の中で耳を澄ましてみればしとしとと雨の音。
久しぶりの雨だった。
時計の秒針、雨音。
それだけが響く、この時間が心地よくてまた眠気に誘われる。
もっと聴いていたい。でもそろそろ起きないといけない。
そんなありがちなジレンマに苛まれる。
一息ついてやっぱり起きようと決めた時、自分ではない呼吸音が聞こえた。
上体を起こして確認すると、ベッドに寄りかかって寝ているゾムの姿。
首を痛めそうな体勢だなぁ。
どうしてゾムがここに?
その疑問に答えをくれたのはポトリと落ちた、小さく折りたたまれたタオル。
ベッドの横の机には水の入った桶とコップ。
それを見て、自分が熱を出してしまったことを思い出す。
迷惑かけちゃった。
仕事も終わってないし、トントンに怒られちゃう。
そこで机の上に積まれているであろう書類に目を移す、がそこには一枚も無かった。
そっとゾムを見ると、彼の足元には数枚の資料とペン。
慣れない仕事をしてくれたんだ……。
でも流石にあの量をゾム一人ではできないだろう、シッマやシャオロン辺りと一緒にやったのかな。頭が上がらない。
『ありがとう、お疲れ様』
少しだけ見える横顔、規則正しい寝息。
手入れされていないはずなのに綺麗な茶色の髪を、軽く撫でた。
「……ん」
『あ』
ぴくっと肩を揺らしてゾムが声を漏らす。
そしてゆっくりと顔を上げた。
やはり、というべきか、痛って……と首を押さえる。
『大丈夫?』
一声かけるとピタリと動きを止めた。
そのまま後ろを振り返るその動きはまるで幽霊にでも出くわした時の様。
そんなに驚かなくてもいいんじゃない?
なんだかおかしくて、自然と頬が緩む。
微笑んだ私の顔を、緑色の瞳が捉える。
「……起きたんか」
『ついさっきね』
「もう大丈夫なんか?」
『うん、前よりも元気になったぐらい。ごめんね、迷惑かけて』
自分の体調管理をちゃんとできていなかった。
それは仕方ないなんてことはなく、ただの無能アピールだ。
軍隊という場所においてはさらにその意味は深まる。
自分の事すらまともに出来ない人材なんて頭を抱える原因にしかならない。
そう反省する私にゾムは責めるわけでもなく、よかった、と笑ってくれた。
その後のみんなの反応も同じようなもの。
ちょっと大袈裟な気もしたけど。
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リノ(プロフ) - 綾波夜見（自宅パソコン）さん» コメントありがとうございます。イラつく女を書くのは個人的に楽しかったです(笑)ありがとうございます！！ (2017年9月29日 21時) (
レス) id: 02182e081c (このIDを非表示/違反報告)
綾波夜見（自宅パソコン） - イラーナさんにものすごくイラつきました←そして、そんな女にプレゼントしている鬱先生にも← いつも楽しく読んでいます！！更新のほう、無理しない程度に頑張ってください！！応援してます！！ (2017年9月29日 18時) (レス) id: 624c95f6b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リノ | 作成日時：2017年9月6日 21時
