SEVENTEENの長女 (ページ2)

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宿舎に帰りながらどうして私に話が来たのか、これといって理由が思い浮かばない。

あるとしたら、やっぱりミンギュ？
私の弟ミンギュはプレディスの練習生で、頻繁に連絡を取り合っている訳ではないけれど私が今の事務所を退社しようか考えていた事は知っている。

「ヌナ～」

深くフードを被って俯いていたのをその一声でパッと顔を上げた。

『ミンギュ！』

弟が宿舎の前でぱらぱらと手を振っていた。

『どうしたの？』

急いで駆け寄ると体の後ろに隠していたコンビニの袋からアイスを取り出した。

「じゃ～ん、これ食べながら話そうと思って」

私の好きなメロンのアイスとミンギュの好きなチョコのアイス、2人で分け合って食べていた子供時代を思い出した。

「今日電話あったでしょ、プレディスから」

『あった！やっぱりミンギュか～』

アイスの袋を破きながらへへっと笑う。

「だってヌナ練習生やめちゃうのもったいないもん！」

メロンのアイスを手渡しながら、トコトコと公園の方に歩いていく。

『ん～、だけどさ、このまま続けても希望が無いっていうか、これ以上お母さんとお父さんに迷惑かけたく無いし』

チョコのアイスをかじったミンギュはキョトンとした顔をした。

「迷惑？お母さんもお父さんも応援してくれてるじゃん」

『そうだけどね、』

実際、迷惑をかけたく無いというのは建前、本音はもう夢を見続けるのに疲れてしまったから、叶う保証はどこにも無い夢を追い続けることにしんどくなってしまった。

「もしヌナが本気でそう思ってるなら全力でやり切ってから辞めたら？まだチャンスはあるじゃん」

呑気にアイスを食べながらミンギュはこう言ってはいるが、きっと私の気持ちを全部気づいてて、このまま辞めたら後悔するって分かってるから、プレディスでもう一度夢を目指すチャンスをくれたんだと思う。

『頑張ってみる』

「お！言った！」

『もう一度、全力で頑張ってみる！』

表面が溶けてしまったアイスを一舐めしてわーっと下り坂を走った。

せっかくミンギュが作ってくれたチャンス、無駄にはしたく無い。

これがダメならもう辞める。
　
ピタッと止まってミンギュを指さす。

『これからはライバルだからね！』

2人でふふっと笑って

「それでこそヌナだ～」

私はこの日をきっと忘れはしない。