2話 ページ2
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「かわいー。コイツ、捨てられてたの？」
「ぁ、う、うん。そうみたい」
子猫が彼の匂いを嗅ぐなり、すり…と顔を手に擦り付けて甘える仕草をしていたので、懐いた…と思わず呟いてしまった。
彼の問いに答えれば、悲しそうな、申し訳なさそうな顔をして彼は子猫の頭を撫でながら謝った。
「ゴメンな、俺の家動物飼えなくてさ…お前の事助けてやれねーや、」
ずキュン。いや、グシャッとでも言うべきか。
私はここで彼に落ちた。完全に恋に落ちてしまった。
しゅんとしながら子猫を撫でる彼が完全に私の好きな顔をしていたのだ。正直顔がタイプだった。その上動物に優しいときた。惚れる他ないだろ。
「あ、の！私、引き取り手が見つかるまで家で保護しようと思って…！だから、安心して！大丈夫！！」
なんて、まくし立てるように言ってしまった。完全に変な人だと思われた。死にたい。
ただ、子猫を見つけた時から雨の中置いておいては風邪をひいてしまうので保護しなければ、と思ってはいたので、彼によく見られたいだとか、そういった下心からきたものでは無いということは理解していただきたい。
「マジ！？よかったぁ…！お前も、優しい人に見つけて貰えてよかったなー！」
猫を抱きながらそんなことを言うものだから爆発してしまう所だった。興奮で。私が。
「俺、3組のシャークん。多分同じ学年だよな？」
「えと、5組のA、デス…」
「きりやんと同じクラスじゃん！Aさんな！よろしく！」
「よ、よろしくねっ…！」
今彼の口から聞き馴染みのある人物の名が上がった気がするが気の所為と言うことにしておこう。ギザギザな歯をのぞかせて眩しいくらいの笑顔でよろしくと話すシャークんにこの笑顔で雨止むのでは？空晴れるのでは？等とさえ思ってしまったくらいだ。勿論止まなかったが。
その後、彼とは別れて私は子猫を抱いて帰宅した。両親は動物好きだったため事情を話せば次の日に行く動物病院代を出してくれた。なんならウチの子にしようと提案してくれて、拾った子猫は家族の一員になったのだ。
生後3ヶ月の女の子の猫だった。名前はどうしようかと家族で悩んでいた時、「しゃけ」にしようと言ったのは私からだ。これに関しては完全なる下心である事を認めよう。「可愛いね、しゃけちゃん」と復唱する両親に少しの罪悪感を感じながらも子猫ちゃん、基しゃけちゃんは元気に返事をしてしまった為、その名で決定となったのである。
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作者名：たなかです。 | 作成日時：2022年1月7日 5時
