椿の花言葉って「謙虚な美徳」らしいから控えめに生きてくわ。【QK】 (ページ9)

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その日も、いつもの様に私を暴きに来る憎い童を喰ろうてやるつもりでした。
いつもの様に、この姿を表して、呪い殺してやるつもりで。
しかしそれは驕りでありました。私の憎悪は、たった一人の童の想いに敗れたのです。
愛すべき男を護りたい、ただその想い一つに。

彼らがこの森に来たのはまったくの偶然でした。元々私を暴くつもりなど毛頭なかったのでしょう。ましてや兄の方は私を知覚しておりました。
まだ呪いの現れる前から。今思うと、この時点で私は改めるべきだったのです。己を過信し、彼を侮ってしまっていた。
兄である大きな彼は、私が見えた瞬間いの一番に小さな彼を庇おうとしました。ですが、私も馬鹿ではありません。より確実に獲物を手に入れる為にはどのように動けばいいかはこの身に沁みついておりましたから。
迷いなく小さな彼の前に姿を表し、呪いをかけました。かけた筈でございました。

彼を苦しめる為に覗き込んだ瞳に呑まれ、気が付いたら彼の中でした。
私ともあろう者が、たかが童一人に無様に敗れた瞬間でした。
それからというもの、彼の中で彼の意識に語り掛け度々邪魔をしてやりました。
大事な場面であったり、命の危機であったり。彼の窮地に意識を刈り取り、表に出てやりました。最初こそは大きな彼に戒められ蔑まれ散々でしたが、小さな彼が段々と大きくなって行く様を一番近くで見ていくと、その大きな彼への途方もない想いを側で感じるばかりで、いつの間にやら私まで感化された様でした。彼の為なら死んでもいいと。
彼の力になれるならこの命を投げうってしまいたいと。

いつしか私は彼、河村拓哉の意思と同体しました。彼の想うことを私の心とし、彼の心を害すならば私が護りました。
そうしている内に、私の中の憎悪は消え去りました。

あれ程迄に憎かった人間を、いつしか愛するまでになっていたのです。
小さかった彼に対しての愛着と、愛すべき男への執着とを掛け合わせて。

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