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「俺にもちょーだい」
「あいよ、口開けな」
「あー、ん。うま」
「よござんした」
優しい顔で川上さんを見て、そのまま食事を再開する椿さん。川上さんも当たり前みたいな顔してるし。やっぱり仲いいなこの2人。
まあ椿さんは誰にでも優しいけど。そのまま3人でパスタに舌鼓を打つ。
それぞれが食事を終える頃にはもうすっかりお昼時は過ぎて、店内に人も疎らになってきていた。
食後にお冷を空にした川上さんが「もう出よ」と一声かけるので、椿さんが伝票を取って立ち上がる。スマートだ。
機材をまとめて席を立つと、支払いカウンターには先程の店員さんがいた。
おっとこれは修羅場では？そう思い川上さんに視線を向けてみると、案の定長い前髪の下で眉間に皺を寄せていた。あらら〜、これは…。
「10000円からお預かりで、お返し6325円になります！」
「はい、ありがとう」
「いえ！あの〜よかったら…」
「ねぇかえろ」
女性店員さんが何か言おうとしていた時、少し後ろで見ていた川上さんがその二人に割って入る様に椿さんに身体を寄せ、甘える様に囁いた。
びっくりする程砂糖を溶かしたハチミツみたいな音だった。胸やけしそう…。
それを見た女性は分かりやすく顔を歪めて川上さんを見ていた。それ女性同士でやるもんじゃないの？キャットファイトみたいな。
当の椿さんはそんなの慣れっこですみたいな顔して「いいよ」と微笑んで川上さんの手を取って歩き出した。女性の方は特に見向きもせずに。いやそれ逆にかっこいいって。
「晃樹もおいで」
「はーい！」
俺は一瞬だけ女性に哀れみの目を向け、2人の後ろを小走りで追いかける。
すぐに追いついて椿さんの背中に軽く手を当てる。一旦振り返ってみると女性が凄い顔で驚いているのが見えた。その視線を辿ってみると、川上さんが後ろ手に中指を立てていて不謹慎だが笑ってしまった。
それを川上さんに咎められて軽く謝ったり、相変わらず距離の近い二人を眺めながらそのまま3人で店を出て、駅に向かって歩き出す。
その途中で来た時よりは控えめだけどまた前方でじゃれあいというか乳繰り合いが始まってしまって、すかさずGoProを起動したり、俺がその流れ弾に当たったりと3人でわいわい騒ぎながら帰路に着く。
当初の目的は果たしたし、決して優雅な散歩って訳ではなかったけど楽しい1日になったかな。
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作者名：眞宮 | 作成日時：2022年9月9日 8時
