椿の花言葉って「謙虚な美徳」らしいから控えめに生きてくわ。【QK】 (ページ26)

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さながら脱出系ホラーだな。俺ホラー苦手なんだけど。
河村も苦手なんじゃなかったっけ？いやこれは日常か。
なにやらスマホをタップし終えると、真っすぐ前を向いて「じゃ須貝さん行きますか」と一人で歩き出す河村。俺の方を見向きもせずスタスタと進んでいく。
いや置いてくな？てか脚早っ！？
そんなに急ぐことないんじゃない？ねぇ？河村？
「君早いよ！？」と殆ど叫び声に近い声を上げながら先に行く河村についていく。軽く走ってやっと追いつくが、それでも尚ノンストップで先頭へ向かっている。

「因みにここどこだか見当ついてるの？」
「大方は」
「ううぇ…待って心の準備する」
「推測はやみ駅。次きさらぎ」
「うわ全然準備できてないのに言っちゃったよ」

やみ…きさらぎ、きさらぎかぁ…。きさらぎ駅ですか。そうですかそうですか。とんでもないねぇ！？ヤバくないか？？きさらぎ駅って降りても降りなくてもヤバい駅だったと記憶しております！？
目に見えて慌て出した俺を見て椿に似た笑みを浮かべる河村。こういうところ本当にそっくりね貴方たち。
知っている名前の衝撃と河村の対応に感心しつつ、その場にしゃがみ込んで項垂れる。
そこまですれば流石の河村も立ち止まって、直ぐ俺の目の前に膝をついた。
そして手元にあったスマホの画面を俺に向ける。見えたのは訳の分からない文字列が並んだトークアプリとその最後に【帰って来いよ】の文字。アイコンからみるに椿だろう。
思わず河村の顔を見つめると、彼は目尻を下げ口角を上げた椿の様な笑い方で呟いた。

「とりあえず兄ぃに言われちゃったから帰らないとね、無事に」
「そんな上手くいくもんなの？」
「大丈夫大丈夫、もうすぐきさらぎだよ」

河村のその声を合図に、先程まで何も見えなかった車窓から僅かな光が差しやがてゆっくりと停車した。恐る恐る窓から覗いて見えた駅看板にはでかでかときさらぎと書かれていた。
眉を顰めて怖がる俺の手を引いて強引に立たせ、「はいGO！！」と軽快に俺の背を押す河村。だから君なんでそんなに明るいのよ？
普段なら力負けするようなことは無いのに、その勢いと恐怖による及び腰で上手く力が入らないのもあってあっという間に電車を降ろされていた。
まぁじできさらぎ駅のホームじゃんね。このお先真っ暗感よ。

・→←（きさらぎ駅）