椿の花言葉って「謙虚な美徳」らしいから控えめに生きてくわ。【QK】 (ページ25)

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（きさらぎ駅）ページ25

まぁたこれだ。こういうのは初めてではない。初めてではない、が今回はまた珍しい奴と一緒になってしまった。しかも俺より経験値も対処法もいくらでも心得ている正直言って頼りになる奴。
現に今のこの状況ですら心を乱さず冷静に動いて現状把握に勤めている。俺はその後ろを小さくなってついていくだけである。頼りない大人でごめんな河村。でも俺零感で見えるものも視えないし君に頼るしかないんだ、許せ。
俺は河村と一緒に電車に乗っていて、俺たちが降りる駅の前にトンネルを通った。そのトンネルを抜けた後から周りにいた乗客が消え、俺と河村の2人だけになってしまった。
その事に驚き慌てる俺に、河村は「うわ入った」とイヤホン忘れたくらいの熱量で呟いた。少なくとも俺には大惨事に見えていたこの不可解な状況が河村にとってはその程度の日常だったことを感じ、少し引いてしまった。
まぁあの椿と一緒にいる時点で分かり切ってましたけども。
何気なく眺めた列車の窓から見える景色は、塗りつぶされたように真っ黒でこちらからは何も見えそうになかった。

「ねぇ、これ俺たち無事に帰れんの？」
「ん～どうでしょうね～」
「ちょっと不安煽るようなこと言わないでよ～！」
「まぁまぁ今調べますから、ナイスガイしっかり！」

にこにこと笑いながら怯える俺を励ますようにイジる河村。逆に何でそんなに余裕なのか俺にはさっぱりわからん。何か秘訣でもあるなら分かるけどさ。
座っていた座席から立ち、軽く周りを確認しながらとりあえず進行方向に従って先頭まで歩く。
途中看板や広告等を読んでみるが、何となく読める字と何だか分からない文字の羅列だったり頭がその文字列を拒否しているみたいに理解が出来なかった。
これはまずいんじゃあないでしょうか。
後ろを振り返り、河村の方を見てみると彼は彼でスマホを見つめて考え込んでいた。

「文字が読めないのは気持ち悪いなぁ…そっちなんか分かった？」
「文字化けしちゃっててさっぱり…僕もあの企画出とくんだったな～」
「俺出てたけどサッパリよ？」

未だにスマホを見つめて思考中の河村。分からないなりに情報を集めているのだろうか？まぁ正直こんな訳の分からない空間に連れてこられて冷静でいるだけで凄いことだし。そこからまた必要な情報を探し出すなんて現実的じゃないし。

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