椿の花言葉って「謙虚な美徳」らしいから控えめに生きてくわ。【QK】 (ページ23)

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そう言われ、お兄さんの隣にしゃがみ恐る恐る大きな犬に手を伸ばす。元々僕の腰まである子だからしゃがんでしまうと座高が大体同じになる。いやでっかいな。
伸ばした手を鼻先で軽くつついた後、その手の下に頭を擦り付ける様に頭を垂れるわんちゃん。あれ、可愛いぞ？
誘われるようにそのサラサラの毛並みを撫でてやると、耳をぺたんと下ろした朗らかな顔でパタリと尻尾を揺らして喜んでくれたみたいだ。なんだか嬉しくなって勢いに任せて両手でワシワシと首やら頭やらを撫でてあげた。そしたら段々とテンションが上がっているのか尻尾をぶんぶんと振って遂には前脚を上げて僕の方に乗せてきた。もちろんいきなり体重を掛けられたらしゃがんでいたこともあって重力に従って身体が傾く。
あ、倒れる。案外冷静な頭で自分が後ろに倒れていくのが分かった。
衝撃に備えてぎゅっと目を瞑るが思っていた衝撃は訪れず、代わりにボスッと音がして大きな体温に包まれた。

「おぉ、懐かれてんな」
「あ、ありがとお兄さん」
「いーえー」

お兄さんの大きな胸に支えられて、未だに僕の方に前脚を乗せてちょっと気まずそうに首を竦めているわんちゃん。悪いことをした自覚はあるらしい。
「大丈夫だよ」と額の辺りを撫でてあげるとこれまた嬉しそうに尻尾を振ってぺろぺろと顔を舐めてきた。正に前門の犬後門の兄である。いや前後が違うけど。
あまりにも激しいのでちょっと離れた所にいたこうちゃんも心配して声を掛けてくれた。僕はそれに何とか答え、後ろでげらげらと笑うお兄さんに助けられた。

「顔ベタベタなんだけど…」

「タオル使えーｗ」

「食べられたかと思ったわマジで、大丈夫？山本さん」

「大丈夫、びっくりしたけど」

首に掛けたタオルで濡れた顔を拭いながら未だにそこに居座る犬を見る。全然帰らないな。お兄さんの言う通り懐かれたってやつなのかな？

だとしたらそうすれば良いのかは流石に分からないけど。

わんちゃんとお兄さんを交互に見て、縋るような視線を向けて助けを求めると、さっきまで笑っていたお兄さんが困ったような顔をして考え込む。顎に手を当て、視線を一周させると軽い調子で呟いた。

「どーせついてくるし名前付けてやったら？」

「ついてくるんだぁ…」

「くるくる、諦めろ」

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