とある男女のSS【QK】 (ページ4)

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御手（ko-chan）ページ4

８月某所。というか自宅。お互い対面して机に向かっている。
外は茹だるような暑さで、今日の最高気温は35℃。とてもじゃないが喜んで外に繰り出す気温じゃない。というより彼女もまだ作業が残っているので、この快適な26℃の室内から出ることはないだろう。
彼女は仕事の書類や案件先の情報点検をしているようで、俺が目の前に居ても特に気にしていないようだ。それをいいことに俺は彼女の顔を観察することにした。
机に肘を付き、頭を支える様にしてぼおっと彼女の顔を眺める。
いやぁ、しかし顔がいい。俺の彼女面がいい。
白い陶器の様な肌もそうだし、長い睫毛も珍しいスティールブルーの瞳も。墨みたいに黒くて長い髪も。全部が素敵で綺麗で、俺の好きなところでもある。
時折前に垂れてくる髪を払ったり、耳にかける仕草だったりを見ていると、その細くてスラっとした指に目が留まる。左手の薬指に俺とお揃いの指輪が輝いていてより一層彼女の美しさを演出している。
あぁ、えっちだなぁ。
温くなった思考で頭の悪いことを考えた。

「……何が？」
「えっ」
「えっちって？」
「あ」

書類を捲りながら彼女に問いかけられ、先程の考えが口吐いて出てしまった事に気付いた。俺は驚いた表情のまま暫く固まってしまう。
彼女は一度も視線をこちらに向けていないので、その間も紙の擦れる音だけが響く。
俺は左手で頭を掻きながら、腕に顔を突っ伏してあーだのうーだの唸るしかなかった。
そのまま彼女の作業音をBGMに時間がだけが過ぎていく。

少したって、トントンと机を爪で叩くような音が聞こえてきた。
音のする方、基彼女の方を見上げると、髪を抑えながら俺を見つめて微笑んでいた。
無意識に彼女の方へ左手を伸ばした。