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ページ29

「こうちゃんあんなこと出来たんだ…」
「え」
「え?」
「あ、いや同じこと思った」

「やっぱり思いますよね?」なんて笑う乾。やはりフレンドリーでキャッチ―なキャラだからか後輩にも(イジられる)好かれるあの男、実は尊敬できる先輩なのである。
そのままカメラマンさんの指示を軽々と熟し、周りからべた褒めされるワンちゃん達。いや躾けの賜物やろ。

「テトラはパパが好きね」
「遉はダリが好きでしょ?」
「好き」
「俺は?」
「大好き」
「よっしゃ」

撮影の合間に軽口を挟む夫婦。その一瞬一瞬が絵になること。カメラマンさんもカメラを降ろさずにシャッターを切り続けていた。
なるほど灰色の女の子はテトラちゃんというらしい。覚えて帰ろ。
ワンちゃん達の協力もあり円滑に渡辺家で撮影を終えて、その後もいくつか撮影し終わる頃にはすっかり日暮れであった。

すっかりいつも通りの字樋さんとこうちゃんを見て「これはこれで推せる」と全肯定オタクを披露する旭を引っ張って2人から引きはがす。

「は!?握手会やないのに剥がしおんのかよ!!」
「うるさいわお前ほんま」
「ほんとにうるさい」
「こうちゃんにだけは言われたない!」
「だけってなんだよ!!」

あぁ最初から最後までこれか、と2人を遠い目で眺めた。暫く収まらないであろう口論を余所に奥様は乾達とのほほんと会話をしている。

「いろんな現場行きましたけどやっぱり先生が一番綺麗でした」
「それはありがとう、嬉しい」
「あーしも嬉しかったです!」
「あ、そうそう僕聞きたかったんですけど、何で黒にしたんですか?」

そう発した乾の声が思いのほか大きく、前方でぎゃいぎゃいやっていた2人も振り返った。
全員の視線を浴びて、字樋さんがゆっくりと告げる。

「皆知ってると思うけど。白は貴方の色に染まります、黒は貴方以外には染まりませんって意味があるらしくて。純白と潔白なら、私は圧倒的に後者かなと思ってね」

「それだけ」と微笑んで歩き出す彼女。そして丁度前方の2人を追い越したところで、震えながら旭が叫んだ。

「これがエモってやつですか!?」

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作者名:眞宮 | 作成日時:2022年9月7日 0時

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