おつかい（trsk） ページ21
「じゃあ買い物してから帰ればいい訳ね？」
『そーリスト送っとく』
「うん」
『あー！あと化粧水！化粧水買ってきて！』
「いいよ、どれ？」
『いつもの！』
「それがどれよ？」
『待ってぇ〜、え〜っとなんかピンクの〜コスメ、デコルテ！』
「うん買ってくよ、じゃあね」
『あーい頼んだー』
通話を切って肩で挟んでいたスマホを置いて、改めてPCに向き合い作業を開始する。
オフィスに残って記事の執筆や資料を照らし合わせる作業はやはり肩がこる。
シュポンと音がして通知を確認するとザっと10項目程あり思わず笑ってしまった。
そこまでいってふと、気付く。周りから音がしない。こういう時の大半は、良からぬことが起こる。ホントに断言できる。
目線だけ向けて様子を伺うと、オフィスに残っている５人が一斉に僕を見ていた。
「…いやなに」
「いやいや今のは気になるでしょ！」
「え誰？誰？誰？」
「誰でもいいでしょーよ」
ぎゃいぎゃい騒ぐ外野を余所にまた作業に戻る。いつも通り騒がしいこうちゃんや伊沢さんは「絶対彼女だ！！」と盛り上がっているし、それを後ろで爆笑している福良さんも止める気はないらしい。唯一林だけは申し訳なさそうに「聞くつもりはなかったんだけど」と謝ってくれた。純粋な後輩である。
「仲いいみたいだね」
「まぁ、それなりに」
隣に座った河村さんがスマホを指しながら問いかけてくるので、何とも当たり障りない答えを呟く。まあ確かに仲はいい方だと思う。
お互い過干渉はしないし、生活リズムが違っても連絡は取り合っているし。自分もちゃんと彼女を好いているし、好かれている自覚があるので。
さっきのメッセージに簡単な了解スタンプで返すとすぐに既読が付いたので、スマホを開きっぱなしにしているのかもな、と考えてまた小さく噴き出す。
それを聞いてさっきまで騒いでいた連中がまたこちらに興味を移したらしい。おっとしくじったっぽい。
「いやいやそんな表情する人誰でもいいわけなくない！？」
「やっぱ彼女でしょ！！！」
「だったらなんだっていうのよ」
大声で迫ってくる2人を尻目にひたすらキーボードを叩く。僕の投げやりな返答を聞いて、尚盛り上がってしまった。「うわうるさっ」と注意してもすっかり楽しくなってしまったのか2人は止まらず、更に悪ノリした福良さんと河村さんも参戦していた。
やはり信じられるのは林だけか。
「皆して何さ？僕に彼女がいたからって」
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作者名：眞宮 | 作成日時：2022年9月7日 0時
