飲み会(hys) ページ16
「え!それ誰!?ジャスコの彼女!?」
無神経な大声が居酒屋に響き渡る。その後5秒ほど静寂が訪れ、後、轟音。
楽しい飲み会の席が一対多数の記者会見に変貌した瞬間だった。これが他人なら率先して野次馬してやるところだが、今回は不幸な事に俺が一側、当事者だった。
これは黙秘権を行使したところで逃がして貰えないだろうなと酒の回り始めた脳で結論付ける。俺は諦めて小さく答えた。
「そう」
「めっっっっちゃ美人じゃん!!!」
「え、これ外人さん?」
「えー!!見して見して!!うわきれー」
「うわ人形みてぇーじゃん!!」
好き勝手騒ぎ出す外野に押されるようにグラスの酒を煽る。すっかり氷が溶けてまずくなっていた。うっかりテーブルでスマホを開くのではなかったなぁと反省するが、後悔先に立たず。こうなってしまっては後の祭りである。
まぁ、彼女を待ち受けに設定していた俺も悪いわけだし。でもここまできたらいっそ惚気るか?ぐるぐると酒の回った性か普段ではしないような行動まで起こしそうになる。
手に持ったスマホを指紋認証で開け、画像フォルダをタップする。
軽くスクロールして鮮やかな金色が画面に50分割くらいで映ったところで指を止める。その中の一つをタップして画面に映し出す。
あぁ、これは厳島神社にお参りしたときだ。丁度秋口だったのでペアのジャケットを着ていた気がする。綺麗な景色と海にはしゃいでいる彼女を思い出すと自然に頬が緩んだ。
皆の視線を受けながらスマホを周りの野次馬に見える様に傾ける。
「これ、去年の秋に旅行行ったときの」
「おいおいおいおい!お前一緒に旅行だぁ!?」
「ラブラブかぁ!?」
「え、てかスタイル良!!」
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作者名:眞宮 | 作成日時:2022年9月7日 0時