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思わず見惚れて眺めていると、痺れを切らした彼女が手当を急かしてくる。慌ててスマホを置いてガーゼをテープで固定する。後は血の付いたコットンと救急箱を片付ければ完了である。
ゴミ箱と洗面所を経由してリビングに戻ると、彼女が俺のスマホでさっきの写真を眺めていた。
「まだビリビリするんですけど」
「申し訳ございませんでした」
「アイスを所望する」
「はい只今!」
そういわれるや否や急いで冷凍庫まで走る。中からお目当てのアイスとスプーン、あとメープルか。必要な物を見繕ってなるべく早くリビングへ急ぐ。ゴトゴトとテーブルにアイスを並べると満足げに頷かれた。
「ご苦労」
それだけ言って動かない彼女。数秒沈黙があり、目線を向けられて気付いた。
俺はアイスのカップを開け、メープルを垂らしスプーンで掬う。そしてそのまま彼女の口元までアイスを運ぶ。小さく口を空ける彼女。どうやら正解らしい。彼女の食べやすいようにスプーンを傾け滑らせると、ほぅっと息を吐いて舌鼓を打つ。
それを飲み込んだ後もう一度口を開けて待つ彼女。またアイスを掬って持っていく。
何度かそれを続けると彼女は満足したのか、俺からスプーンを奪って今度は俺に差し出す。
有難く頂戴すると、アイスの甘さと血液の交じり合った変な味がした。それに顔を顰めた俺が可笑しかったのか肩を震わせて笑う彼女。
「変な味する…」
「自業自得じゃん」
「スイマセン」
謝る俺を見て「馬鹿じゃん」と笑う彼女。長い金髪を肩から零して細い指で俺の唇を撫でる。
その指が赤くなっていた。あ、俺血ついたままなんだ。
「これじゃDom/Sabじゃん」
「どむさぶ?」
「SMバース性」
「うわまた未知の世界だ…」
ソファに座り直して彼女の見せてくれるスマホの画面を読む。まだまだ俺の知らない世界があるんだなぁ。画像をスクロールして読み込んでいると、彼女から声がして意識を持っていかれる。
「まぁ、輝くんがくれるなら首輪も悪くないけど」
そのまま赤くなった指を目の前に差し出されて、俺は反射的に舌を這わせる。彼女は面白そうに目を細めて髪をかき上げる。口の中でまた鉄の味がした。
(口濯いできたら?)(そうする…)
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作者名:眞宮 | 作成日時:2022年9月7日 0時