39話 暖かい場所 ページ43
深夜零時。
この時間帯しか集まれないという事で、私は子規と共に特広探偵社へ向かっていた。
深夜零時とも為れば人通りも少なく、虫の音一つ聞こえない。吹く風も町並みも、全てがモノクロでひんやりと冷たかった。
そんな中、私達は事務所の階段をゆっくりと昇る。何時もなら駆け上がっているが、そんな雰囲気ではない。
然しドアを開けた瞬間、賑やかな話し声が聞こえた。
「子規君とAちゃんはまだかしら?」
「あの二人は何時も一緒に居るな」
「やっぱり、歳が近いから合うんじゃないのか〜?」
「そういうもの?てっきり、私は子規がAちゃんを好きなのかと……」
その時顔を真っ赤にした子規が飛び出して行った。私はそんな勢いの有る子規を見て呆気に取られてしまう。
「芙美子さんッ!」
「あら、子規、居たの」
芙美子は肩をがくがくと揺さ振られながらいう。私も遅れて顔を出した。
「ルイス!信子さん!久しぶりですね!!」
私はルイスに飛び付いた。
大きな手が私の頭をがしがしと撫でる。
「久しぶりだな、Aちゃん。うん、髪の毛、短くても似合ってるじゃないか」
「あら本当!爽やかな雰囲気が青いわね」
信子が微笑みながらいう。
良かった…!ポートマフィアに潜入しても、二人とも前と変わってない!
私は安堵の溜息を漏らしてから、にこりと笑った。
すると横でサンが水を差した。
「A、“断髪式だ!”とかいって豪快に切ってたからなぁ……見てるこっちがヒヤヒヤしたよ、何度止めに入ろうと思った事か」
「ロジェ!それは酷くない?」
皆の間に笑いが起きる。
やっぱり、私は特広が好きだ。改めてそう実感した。
武装探偵社の雰囲気も、特広の雰囲気も、どちらも暖かくて好きだ。両親を失って何年間か孤児として暮らしてきたからこそ、その有り難さが判る。
あったかい場所が在るって、素敵だ。
するとドアが開いて、萩原が入ってきた。
「あ、久しぶりに全員揃ったね」
私がそう呟くと、萩原はふっと微笑んで、
「そうだな」
と、いって私の頭をぽんぽんと撫でて呉れた。
暖かい場所。
私の、好きな場所。
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作者名:さくら志摩 | 作成日時:2018年7月22日 23時