3話 会議開始 ページ5
会議室内の壁掛け時計が、午前八時を差した。ボォンボォンと、鐘の音がする。
其の瞬間にガチャリと戸が開いた。
黒いパンツスーツに身を包んだ女性と、灰色の外套を羽織った男性が入って来た。座っていた私達は一斉に立ち上がる。
此の外套を羽織った男性こそ特別広域探偵社社長、萩原朔太郎である。隣の女性は萩原の秘書、林芙美子だ。
｢お早う。通常の出勤時間より早く呼び出してしまい、申し訳ない｣
萩原の謝罪から始まった。言われてみれば、確かに通常の出勤時間より若干早い。
だが、一時間や三十分早かろうが何も変わらないだろう。
｢兎に角、座って呉れ｣
私達は萩原が座ってから椅子に腰を下ろす。
すると隣に居た芙美子が黒革の手帳を見てから、私達の顔を確認する。そしてもう一度手帳を見てから口を開いた。
｢最近、武装探偵社に新しく調査員が入った事をご存知でしょうか。
名前は中島敦。齢は十八。異能力者です。
………そんな彼に海外の異能力団体が多額の懸賞金を掛けました、金額は70億円｣
懸賞金額を聞いた瞬間、私達の空気がどよめいた。たった一人の青年に、70億円？
それ程までに其の異能力団体には彼が必要と云う事なのだろうか。
色々構想を巡らせたが、めぼしい考えは浮かばなかった。
｢海外の異能力団体……団体名は判って居るんですか｣
ルイスが問う。
｢候補は多く在りますが、一つには絞れていません。
後ほど、大使館の諜報員に連絡をし、海外異能力団体の情報の提供をして戴けないか掛け合ってみるつもりです｣
芙美子が淡々と質問に答える。
日本国内の異能力団体の事件を主にしか取り扱っていない我々にとっては、海外の異能力団体とは未開拓地同然だ。今回の依頼は、大変な物に為りそうだ。
だが、芙美子が口にした依頼内容は想像していた物と違った。
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作者名：さくら志摩 | 作成日時：2018年7月22日 23時
