15話 生きる価値 ページ17
私はそんな敦を軽く蹴飛ばした。敦は驚いた顔をして私を見上げる。
「辛気臭い事考えてんじゃないだろうね。若しかして、“僕のせいで皆死ぬ”とか思ってんの?」
「なん、で……」
図星か。
私は屈んで敦の顔を覗き込んだ。口元には血が着いている。
「僕に……生きる価値なんてないんだ……!」
敦は唐突にそんな事を口走った。
小刻みに肩が震えている。苦しいのか、まァ、そりゃあそうだろう。
私は敦の肩を掴んだ。
「生きる価値が無い?じゃあ、此処で挽回のチャンスじゃないか」
私は笑う。
「此処で乗客全員を助ける事ができれば、君は“人を助けられる人”に成る訳だ。人を助けられる人に、生きる価値が無いとは思えないけど。
乗客全員を助けられれば、君は生きていてもいいって事にはならないか?」
私はいった。
敦の瞳に光が点る。私は微笑む。
「私も出来る限り協力するよ。じゃ、やろうか」
私は立ち上がり鏡花に向かって行った。
「来ないで」
鏡花が呟く。
そして閃光が走る。化身は抜き身を振りかざして私に襲い掛かるも、危うく避けた。そして鏡花の事を捕まえようとした時だった。
「危ない!」
背後で敦の声がした。
うん、想定内。敵の反応が良くて安心した。
私は振り返って相手をしようとした。
が、敦が私を座席へ突き飛ばした。
振り返ると、敦の腕が獣の腕となって刀を押さえている。
「……!異能力!?」
私は声を上げる。
敦は敵の突きを交わし、振りかざされる刀を薙ぎ払った。刀が半分に割れ、破片が壁に突き刺さる。
そして鏡花の首元に長い爪を突き付けた。
……完璧だ。君は凄いよ!
「……終わりだ」
敦がいう。
「………私の名は鏡花。三十五人殺した」
「爆弾は何処だ」
私は座席から下りて敦の隣に立つ。
鏡花へ何処かを見つめている。
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作者名:さくら志摩 | 作成日時:2018年7月22日 23時