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『ちょっとさ、首元噛んでくんない？』
「は？」
何言ってるんやこいつ、と声に出しそうになった。
黒ベースのシースルーシャツをぐいと下に引っ張り艶やかな首元を見せつけてくる様子は一般男性なら鼻血が出るのではないのだろうか。
只今はそれどころじゃない。何を言ってるんやが先に勝ってしまった。
首元噛んでくれと言ったのは中学生の頃に出会ったゲーム友達だ。
中学高校は同じで大学は別になったのだが、偶然家が近いこともありお互いの家を行き来している。それはもう性別の差を感じさせないほどのサッパリしている関係で、ショッピはこの距離感がちょうど良かった。
そんなやつが急に首元噛んでと言ってきた。酒に酔ったんかこいつ。さっきまでめちゃくちゃ淡々とゲームしてたやろ。
とりあえずゲーム所ではない。スマホを置き璃杏の方に向き直す。
「その心は」
『あーー、うん。そやね。理由言ってなかったわsorrysorry』
「はよ言えや」
そう言ってじろりと見れば、そうカッカッすんなって殴られた。なんでやねん。
『いやな、大学のサークルの先輩にクソチャラいやつがおるんよ。そいつに今、目付けられてて』
「言い寄られてると。」
『そうビンゴ。さすがショッピ。で、今その先輩に彼氏いるんでって嘘ついてん。それでまぁ最初は良かったんやけど、最近"璃杏ちゃん彼氏いるのにキスマとかつけてこないよね"ってキショいこと言ってきたから』
「俺に頼んできた。」
困っている風に言っているが目の前のこいつは表情1つ変えていない。
「なんで俺」
あまり顔に出ない、しかもそこそこ美人である目の前のこいつは中高それぞれモテていた。男子にも女子にも。
なのになんで俺を選んだんという淡い期待。
『なんか上手そう…じゃなくて信頼だよ』
彼女らしいと言えば彼女らしい理由だ。
「本音漏れてるぞお前。まぁいいけど。痛くても知らんよ。」
『んーん。別いいよ。』
ずいと首を再度差し出してくる彼女。
「どこにつけたらいい？」
『どこでもいいよ。出来れば見えない所がいいかも』
「ん。じゃあここにするわ。」
付けようとする所にするりと人差し指を当てると、手が冷たかったのか無表情のまま少し震えた。
「あ、そうや。」
『なに』
彼女のピアスの着いた耳に口を近づけて一言
「あんまそーいうこと男に頼まん方がええで。」
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作者名：そると | 作成日時：2023年12月23日 22時
