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―
『んん…』
「A、はよ起きな」
声が高め……ということは女性だろうか。声掛けと共に、軽く腰をさすられながら少女の意識を覚醒させていく。
まず目に入ったのが薄紫色の髪色――
『ユリ…じゃなくてお嬢！』
「ユリウスじゃなくてごめんな？ちょっと用があって」
想い人かと思い飛び上がったが、実際の人物はアナスタシアだった。そして、何日も顔を見ていればわかるのだ。今のアナスタシアにはとてつもなくヤラシイ目をしている。
『まさか商談事……』
「察しがええね。Aの同郷の、ナツキくんからの提案で『鉄の牙』も動くことにしたんよ」
ベッドにゆっくりと腰をかけ、アナスタシアは微笑む。そして事の発端から今の状況まで教えてくれた。
『エミリア陣営とクルシュ陣営が同盟を…？しかも白鯨討伐だなんて無茶な！』
「やろ？見返りはたんまり貰えるし、ウチも動くことにしたんよ。もちろんユリウスも」
『そう……私も賛成したいところだけれど…』
頭に過ぎる悪魔の存在――ユリウスやクルシュ。そしてAまでも王都から居なくなれば、止めれる人間などいるのだろうか。ちなみに剣聖は実家に帰省中のため不在だ。
「悪魔が気になるのか？」
『ユリウス……そう…だね。私が決着つけないと行けない問題なの。具体的には言えないんだけど……』
いつの間にか現れたユリウスは、眉を下げてAの顔色を伺う。
「ダメだ……とは言えないな。確かにそちらの問題も気になるのは確かだ」
「そう――じゃあ、Aは王都に残る。で、ええな？」
『はい。早く終われば加勢します』
「では、私の蕾のひとつを君に預けるよ――アロ、Aと仮契約を」
アロと呼ばれたほんのり緑色をした小さな光。ユリウスが契約している準精霊の一つだ。
因みに、アロはロズワール邸に行った時に付いてきてくれた精霊でもある。
『久しぶり。ロズワール邸以来かな？』
Aの周りを一周して浸透するように馴染んでいく。同じ風属性のため親和性は高い。
「……私が精霊術師なのを知っていたのか」
『えっ？！あ、まあ……そうだね』
記憶をなくしているユリウスからすれば、ここで自身の能力について初出のはずだ。Aは思わず動揺して、少し怪しまれてしまった。
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作者名：R | 作成日時：2016年9月12日 0時
