【rizero】ゼロから始める恋物語。 (ページ3)

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Aが異世界にトリップする直前の話

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『はー、まったく、なんで私が昴の家に届けなきゃ行けないの……』

昴(スバル)と呼ばれた男の子は、Aの幼馴染みである。そして、不登校のため、毎回提出物を届けに行く役割を押し付けられている。
今回はそれに加え、Aの母親が作ったお菓子をお裾分けしに行くところだ。

『昴、いる？』

土曜日の午後過ぎくらいだっただろうか。
しぶしぶと、インターホンを鳴らす。

しばらくすると、鋭い目つきの幼なじみ――もとい、昴が出てきた。Aの顔を確認すると、ぱっと顔が明るくなった。取り繕ったような昴の顔が、Aはあまり好きではなかった。

｢お、Aじゃねーか！……なんか酷いことおもってね？｣

『昴って察しは良いよね』

｢ってことはあたったのか！？酷いな！｣

昴は笑顔でAを迎える。いつもこんな感じで、昴の家にお邪魔してるわけだが。

『ラノベ増えた？』

｢フッフッフッ……ただのラノベじゃないんだぜ！最後のどんでん返しがな……｣

『はいはい、すごいね〜』

昴の影響でAも良くライトノベルを読むようにもなった。特に異世界転生や、ファンタジーものを好んでいた。

『ごめん、これ渡したらすぐ戻んないとだから。お母さんが昴にどうぞって』

｢おう、いつもありがとな｣

母親から預かっていたお菓子を昴に渡し、忙しなく別れを告げAは急ぐ。晩御飯のメニューをずっと考えていたAは、目の前から迫るトラックに気が付くことが出来なかった。

トラックの急ブレーキ音が響く。人体が打ち付けられたような鈍い音。

自分自身の体が宙に浮いたのがわかった。時が止まった感覚とともに次々とたくさんの思い出が蘇ってくる。

母親の美味しいご飯が大好きだった。
父親の寛容で全肯定してくれるところが大好きだった。

友人と些細なことで喧嘩したり、
笑ったり、泣いたり。

最後に過ぎったのは、クラスで1人になった昴の顔。

そのまま、コンクリートの地面に叩きつけられる。ドクドクと血が流れ、意識が朦朧としてきた。

“死”を受け入れた瞬間だった。

＿

次に目を覚ました時、自分の目を疑う。

｢嘘...だよね？｣

見渡すと、耳の生えた獣人や、エルフ、もちろん日本人の様な人もいた。

受け入れることが出来ない現実に戸惑う。
体をみても、血が流れている様子もない。

それが、Aが異世界に飛ばされた瞬間。