【rizero】ゼロから始める恋物語。 (ページ2)

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目を開けると、そこは真っ白な天井があった。窓から差し込む光が鬱陶しい。
重たい体を起こし、今の現状を少しずつ理解していく。

どうやらここは病院のベッドのようだ。

『なんで、こんなタイミングで元の世界に戻ってきちゃうのかなあ』

Aは、とあるきっかけで“異世界”に召喚されていた。獣耳が生えてる人だって普通にいるし、ドラゴンに近い人間だって沢山いた。

だが、その世界は本当にあった世界なのかも分からないことだ。もしかしたら壮大な夢だったのかもしれない。

ゆっくりと瞳を閉じれば、初恋の人の顔が思い浮かぶ。薄紫色の髪色に整った顔立ち……そして、誰よりも優しい彼が。心に残るわだかまりが消える事は恐らくないだろう。

想い人の名は、ユリウス・ユークリウス。

Aが異世界にトリップした際にかなりお世話になった人物である。恩返しのためにと、掃除洗濯などの雑用……なんでもやれた。遂には強くなろうと、剣術まで覚えた。

気を抜いた時に少し微笑むユリウスに高揚し、胸がざわめく感覚。顔が火照っていく感覚もなにもかも、ユリウスが初めてだった。

想えば想うほど、会えない距離になってしまった事を実感し、視界がぼやけていく。

もうAは最愛の人に会えないのだ。

こぼれ落ちる大量の雫。拭いても拭いても溢れ出る感情。
誰か止めてくれと願った。

誰か―――