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『此処か………』
_____夜明け前の、遠くの空にオレンジ色が仄かに見え始めた頃。東京駅を出発し新幹線で大阪へ。
そこから更に幾つかの路線バスを乗り継ぎ山奥のバス停で降りた後、予め用意していた紙の地図とコンパスを持ち、未知なる山奥の目的地を目指して畦道とも獣道ともつかぬ道を行くこと約2時間。
現在に至る。
目の前には、四方八方山に囲まれた盆地に、今時あまり見かけることも無い茅葺き屋根の日本家屋風の家が建ち並び、田んぼや畑があちこちにある村。
ふと、近くに立ててある小さな看板の字を読む。
『斎村………』
手に持っていた地図を確認するとおそらく今いるであるだろう場所にバツ印が付けてあり、『斎村』と記されていた。
『さて、行きますか。』
地面に置いていたボストンバッグを手に持ち、村の中へと足を踏み入れた。
今日からここが私の暮らす場所になる。
生まれも育ちも東京の私が何故、こんな所にやってきたのか?
それは__________
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1ヶ月前、両親が交通事故で亡くなったからだ。
久々の2人でのドライブ中、飛び出してきた子供を避けようとハンドルをきり、そのまま電柱に追突。
即死だったらしい。
一人っ子で両親と仲が良かった私は、ショックで引きこもりがちになってしまい学校にも行かなくなってしまった。
しかしそんな時、近畿地方の山奥の村に住んでいるという遠い親戚が私を引き取りたいと、話を持ちかけてきた。
寂しさを紛らわしたくて、私は二つ返事で話を承諾。夏休みが始まると同時に村へ移住することになったのだった。
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作者名:イト | 作成日時:2018年6月17日 16時