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午後10時20分を指す時計の秒針は休むことなく回り続ける。
私が今日、出社した時間は午前8時半。



そう、つまり、私が勤務するこの会社は超がつくほどのブラック企業なのである。そして、そんな会社で働く私は超がつくほどの社畜になろうとしているのである。



「終わんないよー。定時間際に仕事回しやがって、あの部長、許さん!」



鬼のようなスピードで残りの仕事を進めていく。



やっとのことで仕事を終わらせれば、時間は日をまたぐ寸前だった。周りを見渡せばもう誰もいない。私が最後のようだ。暗く、静かなオフィスは不気味な雰囲気を醸し出す。



「最悪だ。早く帰ろ。」



急いで荷物を片付け、電気を消す。私が勤務するオフィスは4階、そのためエレベーターを使わなければならない。急ぎ足でエレベーターへと向かう。下向きの矢印のボタンを押して、ふと思う。



「あれ、そういえば昨日…」



『ねえ、知ってる?最近このオフィスに出るんだって!』

『知ってる!エレベーターの近くで白い人影が出るんだってね!』

『オフィスに最後まで残ってると出会っちゃうらしいよ!』

『こわーい!』



「ほんとに最悪、なんで思い出しちゃうんだよー」



昨日、同僚の子たちが話していた話。噂話だと気にも留めていなかったけど、いざこの状況になると、本気で怖い。


ポーン


エレベーターの到着を知らせる音が鳴った。
早く乗って帰ろうと思っていた矢先のことだった。



『あの…』

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作者名:りんね。 | 作成日時:2021年10月24日 21時

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