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〜治療〜 ページ12

「何をしている」

集中が途切れたことで中途半端に傷が移り、止血をしていない私の腕からポタポタと血が落ちた

「何って、“治療”ですよ」

ー条野sideー
任務中、子供を庇って怪我をした鐵腸さんの傷に毒が付着していた為、軍警の治療室に行くことになった。何故私が着いていく必要がとも思ったが、何を隠そう医療支援部は、軍警が保護という名目の下、利用している人間が統括だと聴いていたものだから、面白そうだと着いていったのだ。が、まさか此処まで不自由で強制的に少女が働いているとは。手足に枷を付けて働く彼女に、もはや軍警は利用していることを隠そうともしていないようだった。彼女は微笑を湛えて我々を迎え、鐵腸さんの怪我を見て悲痛な顔をする。それは余りにも場にそぐった人間的な反応で、それ故に作り物めいて見えた。鐵腸さんの傷を見ると、何故か自分が薬を飲んで、傷に手を翳したところで漸くピンときた。なる程彼女も異能の者か、と。
しかし、疑問が消えたと思えば直ぐにまた、驚かされる事になる
突如として苦悶の音と、苦しげな吐息が聞こえた。発音元は目の前の少女。何をしているのか問おうとしたところ、鐵腸さんに先を越された

「何をしている」

鐵腸さんが彼女の腕を掴んで、強制的に異能を止めたようだ
傷から血の滴り落ちる、ポタポタという音が妙に耳につく

「何って、“治療”ですよ」

何の疑問の音もさせず答えた彼女は、この治療法に慣れたようだった

「いや、これは治療とは云わんだろう」

「でも、私の異能力『傷の苦味』は傷の痛みや傷自体を移すものですし、私の身体は他の人と違って、異能のせいなのか傷の治りが異常に早いので特に問題はありませんよ?」

さも当然のように云う彼女に一瞬言葉を失う

「其れは違うでしょう。治療とは人の怪我を治すことで、怪我を誰かに移すことではありません」

「でも此処では、役に立たなかったら殺されるだけです」

こんな幼気な少女がこの世界の暗黙のルールを知っている。其れだけで何か、自分達が必死になって守ってきた何かが、音を立てて崩れていく気がした。此方が呆気に取られている間に、彼女は怪我を移しきって

「これで大丈夫だと思います。痛いとか、違和感が残っているとかはないですか?」

「あ、ああ。ありがとう」

鐵腸さんの腕からはあの傷が消えていて、その代わりとでも言うように少女の白い服と無機質な床には紅い染みが広がっていた。

〜絶対的な正義の定義〜→←〜たまには昔の話しをしよう〜



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ふくろう(プロフ) - ありがとうございます。本当に、何度も質問して申し訳ありませんでした。すい様に満足していただける仕上がりになるよう、頑張ります。 (2022年9月13日 7時) (レス) id: e74f0f36ba (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - ふくろうさん» はい!ありがとうございます!!執筆がんばってください……!! (2022年9月12日 21時) (レス) id: 52ca6c35ea (このIDを非表示/違反報告)
ふくろう(プロフ) - はい!ストーリーには、少年探偵団・猟犬も入れちゃうでいいですか? (2022年9月12日 20時) (レス) id: e74f0f36ba (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - ふくろうさん» ピアノソナタいいですね!!ではピアノソナタでお願いできますか…? (2022年9月12日 20時) (レス) id: 52ca6c35ea (このIDを非表示/違反報告)
ふくろう(プロフ) - 個人的には【ピアノソナタ「月光」殺人事件】とかの内容の濃い事件に少年探偵団と夢主ちゃんたちを入れた新バージョンを創っても楽しいかなぁと思ってるんですけど、、、 (2022年9月12日 20時) (レス) id: e74f0f36ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふくろう | 作成日時:2022年1月15日 19時

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