他人なのに【灰谷兄弟】

#13 ページ14

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それに私達は他人なのに、なんでそんな事言わせようとするんだろう。
なんで私に関わってくるんだろう。

暇潰しだろうか。
兄妹ごっこを楽しんでるだけだろうか。
分からない。でも有り得る話だ。
…彼らが暇潰しのつもりなら、それに付き合っていればいずれ飽きてくれるだろうか。

そう思うと少し胸が苦しくなった気がして。
でもそれに気付かないふりをした。
そうだ、気が済むまで適当に付き合えばいい。

人の気持ちがよく分からない。
上手に笑えない。
親から関心を向けられない。
友達もいない。

＿＿＿＿＿そんなつまらない人間を面白がってるのなんて、今だけだ。ただの、気まぐれ。


『……兄さん、助けてくれてありがとう』


そう言った直後に予鈴が鳴り響いて、


『授業始まるので教室帰ります』


私は言い逃げるようにその場を去った。

さっきの結論に至ってからは、" 兄さん " と呼ぶ事に恥ずかしさなんかよりも、もっと別の感情が湧き上がってきた。

さっきの私はどんな顔していただろうか。
無表情でいられただろうか。
そうだといいな。

1度口に出してしまえば、その言葉は私の中に染み込んでくるようで。
きっといつか終わるこの " 兄妹ごっこ " 。
いつか終わる筈なのに、そんな呼び方…最悪。

心臓がイヤな音をたてる。
出会ってそんなに時が経ったわけでも無い他人。
絆されてる事も、なんだかんだ心地がいい事も、認めたくなくなってしまった。

無かったことにしないと。
心が動かされないようにしないと。
いつだって勝手に期待して、勝手に裏切られた気になって。
そんな経験は昔何度もした。
もうそんなのごめんだ。

親にも愛されない私が、赤の他人に愛されるわけがない。
自分がつまらない人間だってことは、自分が1番よく分かってる。
そうやって、自分に言い聞かせる。
今も、この茶番が終わるその時までも。




…あぁ、最悪だ。
最悪なくらい虚しくて、切ない。

いっそ出会わなければ、こんな風に心が掻き乱させる事も無かったのに。
ずっと前からあった、自分の本音にも気付かないふりをして生きていけたのに。


『(本当はずっと寂しかった、だなんて)』


私は授業を受ける気になれなくて、その時間は保健室で休ませてもらった。


『(皆勤賞…これで逃しちゃったな)』


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