【完】君が心に棲みついて離れない【場地圭介】 (ページ7)

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雨に濡れた私は帰宅するといたくお母さんに心配された。早く風呂に入るよう促された私はとりあえず荷物を置くために自分の部屋に駆け込んだ。

『……私も楽しかったって、言いそびれた』

自室のドアにもたれかかりそんなことを呟く。

………場地くんに抱きしめられた

普段より近くなった距離に今も心臓の音が鳴り止まず、顔は熱くてたまらない。腕を掴まれ、肩を抱かれた時の場地くんの手の感触がまだ残っているようで。いつからだろう。優しくされる度に、笑いかけられる度に、いろんな場地くんを知る度に、気が付けば、じわじわと場地くんの存在が私の心に入り込んできていた

いつからだろう
その時芽生えた感情に"友情"と名付ける事に
違和感を覚えたのは

そのことに、今まで必死に気が付かない振り、見ない振りをしてきた
場地くんがどういうつもりでも、本当は…私はデートだと思ってた、思いたかった
祭りに誘ってくれて嬉しかった
松野くんはいないんだ、2人なんだ、とか思ったり
抱き寄せられて、優しい笑顔を向けられて、今まで抑えてきた気持ちが溢れ出したような感覚

もう、認めざるを得なかった
私は場地くんを好きなってしまったんだということを

気付いた気持ちに戸惑いながら胸を押さえていると、窓の外からバイクの大きなエンジン音が聞こえた。

この特徴的なエンジン音、よく聞くなぁ

ぼんやりと頭の隅でそう思っていると、冷えてきたのか体がブルっと震えた。荷物と髪飾りを机の上に置いた私は部屋へ出て風呂場に向かった。

・

このバイクのエンジン音が場地くんのものだってこと
場地くんがバイクに乗る人だってこと
他にも彼について知らないたくさんのこと

それらを私が知ることになるのはもう少し先の話。