【完】君が心に棲みついて離れない【場地圭介】 (ページ18)

今日:6 hit、昨日:6 hit、合計:25,570 hit

18[最終話] ページ18

「あ、あの！成瀬さん！」

『んー？なに？』

「今週の日曜日、一緒に出掛けない？」

今私の目の前にいるのは同僚の古賀くん。
10年経った今、私はどこにでも居るOLとして働いている。のだが、古賀くんに最近よく話しかけられると思ったら帰り際に真っ赤な顔でそう言われてしまった。

『あー…ごめんね。その日は予定が、』

「じゃあ他の日！」

『……ごめんね、行けないや。』

「……そっか。じゃあまた明日！」

申し訳ないな、と思いながら再度断ると、行く気が無いのを察したのか大人しく引いてくれた。良い人なんだけど、ごめんね古賀くん。

「ちょ、勿体ない！古賀くん結構人気なのに！」

『うわっ、どっから湧いて出てきた？』

「その言い方ひど。」

同じく同僚の紫月和香。超絶可愛い、顔は。

「折角Aみたいな変人好きなってくれたのに！しかもイケメン！」

『そういうとこ可愛げ無い～。あー、傷付いた。
しかもまだ好きとか言われてないし。』

「何言ってんの馬鹿なの？アレは絶対ほの字でしょ！」

『はいはい。』

「適当に流すな。」

だって仕方ないじゃん、恋愛多分無理だし
場地くんが初恋で、場地くんはもう居なくて

そんなの忘れらるわけない
死んだ人には勝てないって、多分その通り

恋愛に関わったら、その度に場地くんの事思い出す
そして場地くんだったら、そう考えてしまう
過去の私の考えてた通り、他の人を好きになるとかなんて多分無いだろうな

よくよく考えれば場地くんよりかっこいい人なんてきっと居ないだろうし
というか私のかっこいいの基準が多分場地くんになっちゃってるから

10年たった今も場地くんの存在は私の中から消える事も、薄れることは無かった。

ここまで来るともはや執着に近いような気もするけど。

場地くんが居なくても幸せはある。
楽しさもある。
でも場地くんでしか埋められない寂しさも確かにあって。

でも、それでいい。
もし、死者が生者の心の中でしか生きられないという言葉が本当なら。
私の心の中にずっと居て欲しい。
私の心の中でずっと生きていて。

ずっと私の心に棲みついていて欲しい。
それが今、私が望んでいる事だ。

・

君が心に棲みついて離れない【場地圭介】
【完】