61.▼お互い様 ページ15
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Aの記憶が戻っていた。
その事実がじわりと心の奥に染み込んできて、泣きたくなるのをぐっと堪える。
『……えーと…降谷さん…? 何か言ってくださ、』
「名前」
『ぇ』
「…昔みたいに呼んでくれないのか…?」
『……』
思わず口から零れ落ちた願望に近い問いかけ。
ずっと覚えてるのは僕だけで。
ずっと想ってるのは僕だけで。
何も知らないAと一緒にいるうちに、あの頃の思い出が無かったことになった気がしたこともあった。
───── あぁ、僕はずっと…寂しかったんだな。
そんな事に、今になって気付いた。
『…………れ、零くん………って、私だって、ずっと呼びたかったんですから…!!』
そう言って赤く染まった顔を隠すようにAから抱きついてきて、驚きと、言葉に出来ない程の幸福感と愛しさいっぱいになった。
噛み締めるように、もう手の届かない所へ消えないようにと腕の中の彼女を抱き留めた。
*
「…昔みたいに呼んでくれないのか…?」
『……』
……その子犬みたいになるの止めて欲しい!!
威力が凄すぎて思考がふっ飛んで言葉が出てこなかった。
それでも何とか気を持ち直す。
『…………れ、零くん………って、私だってずっと呼びたかったんですから…!!』
好きな人を名前で呼ぶことが、自分にとってこんなにも特別で幸せなことだったんだと実感した。
名前を呼んだ時の零くんの泣きそうで、心底幸せそうな笑顔を見て、心が震えた。
相変わらず熱い自分の顔を見られるのが恥ずかしくなって、勢いで零くんの胸に飛び込むと零くんに身動き取れないくらい強く抱き締め返される。
この瞬間、恥ずかしさより好きって気持ちや幸福感が上回って ─────…
『…零くん、あのさ』
「…なんだ?」
『──── 好きです。私と結婚を前提に付き合ってください』
「…………………は?」
『…っ、』
頭上からそんな拍子抜けたようや声が聞こえてきて思わず笑いそうになる。
『いきなりプロポーズまがいなことされる方の気持ちが分かった?』
「…これは確かに、戸惑うな」
『でしょ?』
「まさかAから言われるなんて思わなかった」
『…自分でもびっくりしてるけど…』
でもね、知ってた?
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お米。(プロフ) - やっちさん» 返すのが遅くなりすみませんでした!コメントありがとうございます<(_ _)> やっちさんのコメント見て「はっ!マジでそろそろ書かなヤバい」と意識が戻ってきましたありがとうございます笑 これからもボチボチ更新して行きますね! (2022年5月15日 11時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 今晩は。続きが読みたいです〜 (2022年4月14日 21時) (レス) @page14 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
お米。(プロフ) - 羊型の画面クリーナーさん» コメントありがとうございます!とても励みになります!暫くの間お待たせしてしまってすみません!完結まで頑張ります! (2021年8月17日 18時) (レス) id: ef08fd2dc5 (このIDを非表示/違反報告)
羊型の画面クリーナー - もどかしさで床に寝転がってバタバタしてる← (2021年8月15日 14時) (レス) id: 3429c88509 (このIDを非表示/違反報告)
棗(プロフ) - 続編おめでとうございます。待ってました!夢主ちゃんついに記憶が戻ったんですねー!早くくっつけーと思うけど色々考えちゃって伝えられない気持ちわかるーーー。早くラブラブになれー (2021年8月4日 18時) (レス) id: b56edad0a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お米。 | 作成日時:2021年7月31日 17時