渦巻く瞳 ページ21
その後、心操はスタスタと選手控室に入った
彼に嫌いなんて言われたが
二度と関わるなとは言われてないようなので
ニコニコしてしまった
あ、ヒーロー科で待ってるって
言いたかったのに忘れてしまった…
まあいいか！轟の試合も見なくちゃな！
心操ごめん！と思いつつ観戦を戻りに向かった
マイク《──お待たせしましたァー！
続きましてはァ！こいつらだ！！》
第二試合、轟ｖｓ瀬呂。
マイク先生の酷いようで的を得ているような実況を添えて
スタート合図が出された瞬間
瀬呂が先手必勝に自身のテープを
轟に巻き付け、繋げたテープ片方の腕で引っ張り
場外へと連れ込むが
瞬きをした次に視界をいっぱいに支配したのは
冷たく光に照らされ輝く氷だった
『…わお』
＼…どーんまーい！／ ＼＼どーんまーい！／／
盛大に凍らされた瀬呂は観客のどんまいコールに
寒さの痛みと苦笑いを浮かべるしか無かっただろう
っとと、そういえば次は私の番だった
氷を溶かすのも大変そうだし、
手伝いついでに滑って行こう
観戦席から身を乗り出し、氷を踏みつける
麗日「あえ！？Aちゃん！？」
『丁度ショートカットが出来たから行ってくるな』
麗日「スタイリッシュ！！」
腰を低くしてバランスを保ちながら
冷えてきた足裏を滑らせる
そのついでに氷を水蒸気へと溶かしていった
会場に着地すると轟と目が合う
轟「流石だな」
『ありがとう……ところで、
誰がキミを
轟「！…どういう意味だ」
いつも光に陰を差したような瞳をしていたが、
陰が増したように見える
私が見ない間に何かあったのは見て取れた
『嫌悪と憎悪が増して見える』
轟「！！」
表情は取り繕ったようだが
図星なのは目の動きで分かった
目尻に力を入れている彼の目元に触れると
少し後ずさりした
『誰だ？子供にそんな顔をさせる奴は』
長年生きてきた私にとって
今の彼の瞳は見た事がある
小さい頃の…私の軍人のひとりだ
愛情なんてない、優秀さを求める親の子…
それも異常なほどの…
轟「っ……緑谷に聞け。二度も言いたくない」
『…そうか。分かった、ありがとう』
目を逸らした彼に
微笑むわけでもなく目を合わせて
髪をくしゃりと崩すように撫でる
轟「お、おい…オレはお前の子供じゃないぞ…」
『ふふ、子供扱いしてるわけじゃないさ』
……試合後、探そう。
そして“一発”かましてやる
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作者名：飽き性 | 作成日時：2020年5月27日 21時
