感情と花の毒 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:8,326 hit

4 ページ4

.

「なんでアイツが？」

人を見下したように笑う声がする。

奴らの顔を見ていると、頭の中で湯が沸騰したような感覚になる。

それは、一般的に言い表すと「殴りかかりたい」だの、「殺したい」だの、そういう感情だろうか。

僕にはその気持ちがわからない。

きっと、"あの時"から僕は、「普通」じゃなくなったんだ。

「西城さんがアイツと話すなんてねえ、どうかしちゃってるよ」

「ほんとほんと。調子乗りすぎ」

「今度、絞めてやんねーと」フハハハ、と下品な笑いが起きる。

フツフツと体温が上がるのがわかった。

僕は教室の後ろのドアから出て行く。

小さなぼやき声がするが、興味がない。

向かう先は一つしかなかった。

保健室のドアを開けると、やはり彼がいた。

僕の姿を見つけるなり、駆け寄ってくる。

「あー！やっぱり来ると思ってた」

白い歯を見せながら笑う彼は、僕の元・親友。飛貴だ。

「......いいから、そこ邪魔」

飛貴は少し眉を下げた。

そして腰掛けていたベッドから立ち上がる。

僕はベッドに横になると、すぐに目を閉じた。

何も考えないのではない。気持ちを落ち着かせるためだ。

深呼吸をすると、空気が肺に入っていく。

当たり前のことではあるが、僕はこの感覚が好きだ。

途端に、足音がする。飛貴がこちらにやってきたのだ。

「......何」

「えっと、今何考えてたのかなあって」

低く、元気のある人間らしい声だ。

「別に」

寝返りを打ち、彼とは反対の方を向く。

「龍我ってほんと変わってるよね」

それは僕が「普通」じゃないということ？そう聞こうとして、やめた。

その答えは、自分が一番知っている。

「今日、那須は来ないの？」

背中からかけられる声にうんざりした。

「知らない。それより飛貴はなんでいつもここにいるの」

早くどこかに移動してくれ、と心の中で呟く。

途端に、飛貴の顔が目の前にきた。思いは通じなかったようだ。

「気になる？気になっちゃう？」

彼が騒がしいので、僕は手探りで彼の首を掴み、軽く絞めた。

うぐぐ、と喚いている。

これでいいか、と思い、手を離す。

まるで死にそうな昆虫のようだと思った。

ここでは到底落ち着けないな、と僕は保健室を出る。

「あっ、待って！」と声がした。

あと、落ち着ける場所と言えば、一つだけ。