無名作家の語ること/spa/2 ページ37
ああそうだな、何から話そうか。
私の事なんて語ったところで、楽しくもないと思うんだ。
ただ眠気とつまらなさからくる苛立ちに頭が支配されていくだけだと、目の前の半透明の男にそう告げた。
「そんなこと君は考える必要もないし、はっきり言ってどうでもいいんだよ。
きっと君の辿った道は結び合わせた偶然に過ぎない。
永く生きた私達からしてみれば、君の語る時間なんて1分程の感覚だということを、君は知っている筈だけれど？」
その言葉に私は初めて息が詰まった。
心臓を素手で鷲掴みにされたような苦しさに襲われた。
私に妖術の類は多分もう効かないが、心理戦となれば話は別だ。
私だってその辺歩いてるサラリーマンやOLと同じで、
これといって能のない、つまらないクソ人間なのだから。
そう、私だってただの弱っちい一人の人間。
あの出会いは、夢か幻覚だ。
そう思えるのはきっと風の様に現れては去ったアイツの呪いかもしれない。
祟りだなんてそんなもの信じる訳はないけれど、
それさえも君に押し付けちゃえば、全部全部、楽になってった。
君の声を忘れた。
君の得意だったことを忘れた。
君の着ていた服を忘れた。
君の髪型を忘れた。
君の顔を忘れた。
君の、名前も忘れた。
嗚呼、人間は酷く醜い。
たとえ愛した人がいたとしたって、結局は同じ道。
私はやっと気がついた。その人が姿を消せば、『その人に注がれた愛』なんてすぐに忘れてしまうのだと。
誰に愛されていたのか。
それだけがすっぽりと抜け落ちてしまった。
だって『その人』が誰かも分からないのだから。
溢れた涙はもう誰も、拭ってくれやしないのだから。
妖怪には人の幸福を祈り、届ける存在もいるものだ。
だからこそ、『______ 』は(人1)Aという少女の記憶から自分を消した。
破られたページには、継ぎ接ぎだらけの白紙が挟まった。
どう見たって不自然で不可解で。
彼女の隙間は、誰にも塞げない。
そんなことは分かりきっている。
忘れないで欲しいなんて我儘、もう叶わないんだ。
彼女の記憶にもう自分は刻まれてないんだ。
『愛してた』
「最後の言葉がそれだなんて、君には悪いことをしたなぁ。
でも、もういいんだよ、A。一人の妖怪にとらわれていなくたって」
「もう私のことなんてお忘れなさいな。」
一人、狐が涙を流していた。
______________
まだ続いてしまいますよ
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らく。(プロフ) - きりたんぽさん» リクエストありがとうございます、少し見てみましたがめささん面白いですね〜！もう少しお勉強してからになりますが、ぜひ書かせていただきます。応援コメントものすごく嬉しいです、ありがとうございます！ (2016年9月12日 20時) (
レス) id: 8ad97f7842 (このIDを非表示/違反報告)
きりたんぽ - 書ける方々に書いてないんですけど、泣き虫な、悪魔めさ(めさ)さんを書いていただけないでしょうか。 無理なお願いをして申し訳ありません。 更新、頑張ってください！ (2016年9月9日 2時) (レス) id: aa815dad7c (このIDを非表示/違反報告)
3.14159265358979323・・・ - きっくん”ん”ん”ん”あ”あ”あ”あ” (2016年8月31日 21時) (レス) id: 138fe4e0ba (このIDを非表示/違反報告)
らく。(プロフ) - ライトユーザーさん» リクエストありがとうございます！楽しんで頂けるよう頑張りますね。コメントありがとうございました！ (2016年8月2日 18時) (レス) id: 8ad97f7842 (このIDを非表示/違反報告)
ライトユーザー - 積極的な蘭たんお願いできますか？ (2016年8月1日 21時) (レス) id: 04185b1930 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らく。 | 作成日時：2015年7月26日 2時
