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この手は月すら掴めない/ko ページ13

暗い。何も見えない。見たくない。



背中が消えた。ずっと先に。
肩と背中が、跡形も無く夜の闇に消えた。
背後で聞こえる音と揺れた光が鬱陶しくなって、目を背ける。




永遠って言葉は信じちゃあいけない。そんな事、誰かが言っていたか。
何よりもその言葉を信じていれば、変わらずに済んだかもしれない。


それでも、やり直せるなら。
そんな事、不可能だと知っているが。









初めから、この気持ちが無かった事には出来やしないだろうか。









見たくもない現実から逃げたくて、空を仰いだ。
そのままの瞬きを繰り返す星と月が浮かんでいた。
いつも通りなのは空だけ、か。




もう帰ろう。そうすればきっと何もかも終わっている筈だ。
下駄の鼻緒が音を立てて引き千切れる。そのまま転がって溜池に落ちた。
とぷん、と音がするのと同時に自分の口からは自虐的な乾いた笑いが溢れた。



「解るわけないよなぁ、そんなもん」



誰にでもなく独りごちる。もう一足も溜池に投げ捨てて、何も無い足をまた進める。
一緒だ。今の自分には何も無い、例えるなら空っぽの箱だ。
今まで積み上げて溜めてきた物は全て無くなってしまった。
積んだ箱もとっくの昔に崩れた。あるいは体感した時間が長過ぎたか。
今まで信じてきたものは何だったのか、本当に自分が馬鹿らしく思えた。




あぁ、これは違うか。




ずっと大切にしてるものを守り抜いている。
そんなの、あまりに自分が穢れていたかの見せしめだ。
二度目の笑いが喉につっかえた。平たく冷たい石の上を歩く。
ずぶ濡れになった下駄を掬い上げてもう一度空を仰いだ。

大嫌いだ。提灯も太鼓の音も。



その夜空には変わらずに瞬く輝きが確かに存在していた。
掴むように手を伸ばせば、光は手から溢れて俺の目を眩ませた。
あと少し。もう少しでこのまま溶けていける気がして更に手を伸ばす。



「っは、馬鹿みてぇ」



手なんて届く筈も無い、言ってしまえば機械がなければ近づく事すら出来ない。
溝臭い下駄を拾い上げた。全てを振り切り忘れる様に。




歩き出せば、届かなく遠かった筈の光が移る、穢れた水が滴り落ちた。

無題/××→←笑顔の後ろに嫌悪感/k



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らく。(プロフ) - きりたんぽさん» リクエストありがとうございます、少し見てみましたがめささん面白いですね〜!もう少しお勉強してからになりますが、ぜひ書かせていただきます。応援コメントものすごく嬉しいです、ありがとうございます! (2016年9月12日 20時) (レス) id: 8ad97f7842 (このIDを非表示/違反報告)
きりたんぽ - 書ける方々に書いてないんですけど、泣き虫な、悪魔めさ(めさ)さんを書いていただけないでしょうか。 無理なお願いをして申し訳ありません。 更新、頑張ってください! (2016年9月9日 2時) (レス) id: aa815dad7c (このIDを非表示/違反報告)
3.14159265358979323・・・ - きっくん”ん”ん”ん”あ”あ”あ”あ” (2016年8月31日 21時) (レス) id: 138fe4e0ba (このIDを非表示/違反報告)
らく。(プロフ) - ライトユーザーさん» リクエストありがとうございます!楽しんで頂けるよう頑張りますね。コメントありがとうございました! (2016年8月2日 18時) (レス) id: 8ad97f7842 (このIDを非表示/違反報告)
ライトユーザー - 積極的な蘭たんお願いできますか? (2016年8月1日 21時) (レス) id: 04185b1930 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らく。 | 作成日時:2015年7月26日 2時

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