1 君だから YX ページ9
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僕はバカだった。
全部君だからだったのに。
大切な君だったからなのに。
それに気付かずに手放してしまった。
もう君は…僕の隣にいない。
_____君だから
君と出会ったのは、図書館だった。
春の日差しが差し込む、そんな図書館。
「これ、落としましたよ?」
韓国語で声をかけられて。
その時の僕は、まだ留学したてで韓国語が分からなかったから、ただ目をパチクリしていたっけ。
そしたら君は言ったよね。
「あなた、落とした、これ」
中国語で。
僕はその時思わず泣いてしまったんだ。
ホームシックになってたから。
突然目の前で、いい年した男が泣き始めたらきっと普通の女性は逃げちゃうと思う。
でも、Aは違ったよね。
「私も、そう、分かる、」
たどたどしい中国語だったけど、すごく嬉しかった。
「ごめん、ちょっとなら韓国語分かる?
私ね、日本からの留学生なの。
だから、あなたの気持ちが分かる」
そう言って微笑む君が、僕にはすごく輝いて見えてたんだ。
春の日差しの中微笑む君が。
「イーシン!
ここは、こうだよ?
連音化が起こるから…」
その日からAは僕に韓国語を教えてくれた。
もちろんAにだって分かんない言葉があるし、韓国語じゃ説明しきれないことだってあって。
そんな時は英語を使って。
とにかく、あらゆる方法を使って僕たちはコミュニケーションをとってたんだ。
…その時までは。
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作者名:あよん | 作成日時:2016年2月20日 17時