1 ただのあなたに ページ48
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「私、お坊ちゃまなんかじゃない、ただのキム・ジュンミョン、ただのあなたに会いたかった。」
彼女が僕の腕の中で発したその言葉は、僕に複雑な感情をもたらした。
_____ただのあなたに
今までの彼女からは聞いたことなくて、それでいて今までずっと、聞きたかった言葉。
どう頑張っても、自分が生まれた家が裕福なことは変えられないし、自分がお坊ちゃんとして育ったことも変えられない。
別に、コンプレックスでも、自慢でも、何でも無かった。
やっぱり近づいてくる女性の中には、僕の後ろ盾を目当てにしている人もいて、傷ついたこともある。
だからかな。
いつの間にか、こんな言葉が聞きたいっていう願望が生まれたのは。
ずっと聞きたかったはずなのに、いざ聞いてみるととっても複雑で、どうしようも無かった。
僕はいつから、こんなに欲深くなっちゃったんだろう。
素の僕を好きになってくれる人。
それが当に今の彼女。
そして、もうすぐ僕のパートナーになってくれる人でもある。
もうプロポーズもしたし、「はい。」っていう返事ももらった。
それなのに、こんなに不安になるのはどうしてだろうか。
ねえ、僕の家が嫌？煩わしい？
ねえ、Aは今の僕が嫌いなの？
ねえ、Aはもしかして、「はい。」と答えたことを後悔してる？
ねえ、A…？
こんなこと言ったら、君は女々しいって笑うかな。
Aのためなら、僕は家だって捨てられる。
君となら、お金が無くたって仕事をして、助け合って生きていけたら、それだけで幸せなんだ。
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作者名：あよん | 作成日時：2016年2月20日 17時
