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目を覚ました私は昨日のことを夢なんかじゃないか、なんて思ってた。
だって、チャニョル、が現れるはずなんかないんだから。
でも。
目の前に広がるのは、私とチャニョルの思い出が詰まった部屋。
私が前に住んでた家だし、何より、ベットに突っ伏して眠る「その人」がいるから。
寝顔。
あの頃と何1つ変わらない寝顔。
でも、突然表情を歪めたかと思うと、
「A!!」
私の名前を呼んで飛び起きた。
「…チャニョラ…」
「あ…Aだ…
よかった。まだ居てくれて。
夢でもさ、俺またAに再会してたの。
でも、朝起きたら居なくなっててさ…
もう、離れていかないで?」
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突然流れ出た涙は、もう留まるところを知らない。
「もう…なんで泣くのAちゃん…」
大好きな笑顔で私の涙を拭ってくれるチャニョルに、ますます涙が止まらない。
「ごめん…チャニョル」
ずっと言いたくて、言えなかった言葉。
「私が逃げたから…」
チャニョルが離れてくのが怖くて怖くて、逃げた私。
チャニョルのこと、信じきれなかった私。
そんな私が、チャニョルと今一緒にいるなんて許されるはずがない。
許されるはずなんて、ないんだ。
ハッと我に帰る。
「じゃ、チャニョル。バイバイ。
これからも頑張って?」
あくまでもクールに、目の前にいるのは大嫌いな奴だと言い聞かせて、私は部屋を出ようとした。
玄関までの最短距離なんて分かってる。
部屋の作りなんて、分かりきっているから。
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作者名:あよん | 作成日時:2016年2月20日 17時