湾岸2 ページ10
「兄者さん此方が先刻の音声と紙媒体の情報よ」
薄暗い部屋で只ディスプレイが光源の部屋で仮想空間を媒介して彼は組織の為に戦う
「助かった。監視カメラの映像は先刻確認したが、まぁ…災難だな」
確かにあれは胸が痛んだ
仮令嘘だとしても
「幾つもの死を見て来たのに齎して来たのに…可笑しな話ね」
半分自虐で笑って述べる
「安心しろ愛玩。俺もAは愛してるから」
「愛玩って非道い、飴と鞭の差があんまりだわ」
前髪を兄者さんに掻き上げられて、額にキスを落とされると嬉しいか恥ずかしいかわからなくて口が歪んだ
「嬉しくねぇのかよ」
「良いわ。どうせ“此の躰は私一人の物じゃない”と言うのよね?」
「厭。Aを見てると庇護欲と所有欲が芽生える」
組織の為に躰がボロボロになる迄愛されて、残せば好い、寧ろ其れが私の存在理由
「お母様に怒られるわよ、副総合幹部様に」
「副総合幹部は屹度“おい
「言いそうね」
笑って外に目をやると、後ろでただキーストロークの音が聞こえるだけ
「そんなに弟が好きか?偶には俺の所にも来いよ」
「私を愛玩と呼ばないのは弟者くんだけよ」
皮肉っぽく笑うと何だか馬鹿馬鹿しくて更に笑えてきた
「彼奴らしいな」
「自分の存在理由等自分で決めたいものだったわ」
煙草の煙を吐くかの如く愚痴を吐く
「其れに本当に忙しいのよ。拷問部隊も中々に」
仕事は過酷で相手は暴れるし、乱暴された事も少なくない。労働環境も生地獄で…
「俺だって忙しい。お互い様だろ」
「特攻と暗殺にはもう少し手伝ってもらいたいものね」
「七大幹部と言っているのに何時も空席で腹立つよな、其奴来たら楽になるの間違い無し…」
お互いに溜息を吐いて笑った
こんな時間が好きだったりする
「そうね。でも頑張るしかないのよ」
夫婦未満兄妹以上で血縁と言う紐帯を感じさせない時間が
「…ああ…待て、A。変なメールがA宛に」
ディスプレイを兄者さんの肩から覗き込むと
【此ノ儘ダト御嬢サン、貴嬢ハ死ヌ】
「悪戯かしら。
「そうするか」
響き渡るキーストローク
「其れにうちの拷問班のお姫様は並大抵の事では死なない」
「そうよ。決まっているじゃない。本家の娘だもの」
私は頬にキスをした
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作者名:姫乃 | 作成日時:2019年5月19日 23時