護岸 ページ6
｢Aさん、幹部殿がお呼びです｣
神妙な面持ちで尋ねてきた部下
何だか嫌な予感がする
｢何方？｣
｢暗殺ぶっ｣
嫌な予感が中った
｢了解したわ。有難う｣
暗殺部隊長兼幹部様の部屋の前に立てば0.01秒も要さずに開く扉
｢A、待ってたよ｣
｢何かしら｣
引張られる様にして中に入れられると、抱き締められて向こうが思い切り息を吸った音がしたからつい突き飛ばしてしまう
｢お、おついちさん…｣
｢A可愛いよ。良い香りがして…｣
御免なさい、それは血腥さを隠す為
｢俺は好きだよ。抱き締めたくて呼んだだけ。来てくれて有難う｣
呆れちゃ駄目呆れちゃ駄目。この人は旦那様の様な者
｢毎回此の様な事をする為に呼ぶので在れば、もう来ません｣
｢俺に一晩奉仕してくれる傚辞めるよ｣
私を抱き締める為に呼んで、強引に腰に手を回されて、而して何言ってるの此の人！！
｢お断り致｣
｢駄目だよ。早くAと俺の可愛い可愛い子が…｣
｢それなら奥様を見つけて下さい｣
手を解いて背を向けて歩き始めても気配を察知して歩を止めてしまう
｢Aじゃ無きゃ駄目。俺はずっとAの事を想ってた、今もそう｣
不誠実な雰囲気を醸し出しておいて、その誠実な言葉をぶつけるなんて
｢…何で｣
私が貴方の事をとっくに愛してるなんて、絶対にとっくに知っている筈なのに
｢何でおついちさんは私が揺らぐ様な言葉を言うんですか｣
｢揺らいで欲しいから｣
矢張り意味が分からない
｢私は誠実な人が好きです｣
｢マフィアは皆生き延びる為に不誠実さ｣
此の人の執心は並ではない
｢いいえ、愛に誠実な人が｣
｢そう…其れ楢俺の事好きだよね｣
｢…｣
此処で好きと言ったら負けな気がする
｢好きじゃないです｣
｢嫌いではないんだよね？｣
｢はい。……あ、｣
負け
｢普通です。好きでもないし嫌いでもない｣
｢其れが一番傷付くな〜｣
大儲け
｢俺は愛してるんだけど｣
其の言葉には弱い
｢…狡い｣
其れだけ言い残して出て行くと呼び止められない事に寂しさを覚えた
｢私だって｣
好きなのになんて言っちゃ狡いですよね
それこそ後出しですよね
消化不良の気持ちがモヤモヤ溜まった
｢…｣
この好意から目を逸らさないように頑張るから
｢…あー｣
如何しようも無く情けなくて声漏れる
｢可愛いお嬢さん迷った顔して如何したの？｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：姫乃 | 作成日時：2019年5月19日 23時
