DROWN (ページ47)

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浪漫主義者ページ47

お嬢さん、お前の為じゃなきゃどんな作戦もシナリオも意味が無い

しかし前世死神の彼女は今世は天使として生きているから作戦もシナリオも必要ないのだがな

｢A、｣

｢どうされたの？｣

お前の手はもう綺麗だ

血塗れた経歴も、血筋もない

命の盗み方も知らない

｢今夜は星が綺麗だってな、おついちさんが教えてくれた｣

｢是非見たいわね｣

こうやって星を眺めて綺麗と言える生活があの時の俺達にはあっただろうか

それにAを逃がしてからやっと俺達にも普通の幸せを味わう時間が出来た

｢…綺麗だ｣

この世界は思ったよりも綺麗だ

生きる世界は汚いもので溢れているけれど

｢兄者さんも綺麗ですよ。素敵の方が相応しいかしら｣

照れて微笑むAが堪らなく愛おしい

｢…A、ありがとう｣

Aをきつく抱き締めると、Aも俺の背に手を回してくれる

｢Aがそう言ってくれて嬉しい｣

その穢れを知らない滑らかな髪を手で梳いた

お世辞にも綺麗とは言えない経歴で

｢…A、本当にごめんな｣

俺が作るのはいつも誰かが墓場行きの物ばかりで

決して自分が手を下さないのが余計に汚く感じた

俺よりも弱いAが女の子のAが、汚れ仕事も目を背けたくなるような残虐な仕打ちもしていた

｢兄者さん…？｣

Aにはその事を忘れてもらったけれど

俺も出来るなら消して欲しいと何度願ったか

血飛沫が付着したあの綺麗な顔を見て何度悔しいと思ったか

｢今のは…忘れてくれ｣

｢私は兄者さんのためならどんな汚い事でも喜んで出来るのよ｣

笑顔でそう言ってくれたAに救われた

涙が出そうになった

妹のように可愛いAはいつの間にか女性になっていて、か弱かったのに今では強くなっていた

｢またこうやって夜空を眺めたいわね｣

｢そうだな｣

夢を見ているような気分だった

来世でも必ず巡り会いたい

｢…A｣

名前を呼んで何も言わずに近付く

Aも察した様に目を瞑る

無機物が有機物になったようだった

結婚式ではないけれど、違う意味での誓いのキスとしてAに口付ける

今はただこの幸せに溺れていたい