海岸 ページ40
私は三日振りに本部へ行き、平常通り仕事に取り掛かっていた
静かな執務室で先日の報告書を纏めている所に、ただでさえ起きているのにも関わらず目の覚める様な警鐘で警戒態勢に入る
｢…何なのかしら｣
[特攻部隊は本部建物を囲め。暗殺部隊は建物内の警備、諜報部隊は最上階付近で待機しろ]
私の出番では無いみたい
之で余裕を持って執筆できるわ
[拷問部隊幹部が裏切りをした。今直ぐ始末しなさい]
躊躇う瞬間も無く立ち上がって銃火器及び防具として使えそうな物を装備した
｢…首領に聞きに行かなくては。誤解が生じてしまったのかも知れないわ｣
重い執務室の扉を開けると、一斉に凡百の階から銃を構える音が聞こえたが撃たれる心配は直ぐに消された
｢首領命令だとしても撃つな！俺が話を聞きに行く。それまで待機だ。撃った奴は騒動が終わり次第裏切りとして処罰する｣
凛々しい声で制してくれた
｢…おついちさん｣
味方の前に立ち尽くして膝を着いてしまう
｢A！！兎に角行くぞ｣
一緒に階段を駆け上り、最高幹部室の前へ
｢A、おついちさん、無事だったか｣
｢ああ。其れと弟者は地上で待機してる。撃つなと連絡は入れておいた｣
｢助かる｣
私が裏切ったかも知れないのに如何して護ってくれるの？
真相なんて分かっていない筈なのに
抑私も分からないけれど
｢…私が裏切りって如何言う事なの？｣
｢俺にも分からねぇよ。取り敢えず話をしない限りは進まない｣
｢良く良く話して決着を付けるしか無いな｣
二人によって重い扉が開かれた
其処に父は居なかったので期待していた通りの結果は得られ無かった
｢待てよ。何か紙がある｣
[執務机の釦を押せば最上階への階段が降りて来る。来るんだA]
｢手の込んだ仕掛ね｣
きっと之は悪い夢か悪い冗談で、本当は何かの話し合い
きっと大丈夫よ
裏切りの疑念も晴れていつも通り働ける
｢行くしかないわね｣
｢…何が有ってもAの味方だ。其れだけは信じて欲しい｣
階段が導く先は静かで床以外硝子張りだった
｢よく来たねA…否、Aのプロトタイプ｣
プロトタイプ…？如何言う事？
｢此方へ来なさい。娘のAが、君に会いたがっているから、最期の挨拶にと、此処を用意させて貰った｣
｢私が私に？意味が分からないわ｣
｢綺麗だろう？｣
見渡す気力も起きない
｢…そういう事だったのか｣
悔しそうにする二人は何を知っているの？
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作者名：姫乃 | 作成日時：2019年5月19日 23時
