DROWN (ページ32)

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右岸ページ32

｢A、一寸外で話そうよ｣

遠くから手を振って駆け寄ってくる特攻部隊幹部殿こと弟者くん

｢今ですか、仕事が立て込んでいるので遠慮させて頂きます｣

肩に乗せられた手を払って構成員室に向かって歩みを進める

｢…A？仕事なんて全部完璧に行く訳じゃないさ。そんな気に病まなくても｣

また私の顔を覗き込む様に隣に戻って来た

｢A？何があったんだ｣

其の優しさに腹立つ反面涙が出てくる

｢…気に病まなくても？｣

｢そんな俺だって今迄失敗して来たし…でも今は此処に居られる…｣

睨み付けても笑顔しか返って来ない

｢私は違うのよ！存在自体が不義である私が失敗なんてしたら…｣

｢失敗なんてしたらもう此処には居られないの｣

振り切って走って逃げた

｢A！｣

逃げないと抑圧された感情が萌芽しそうで

｢待ってくれ！｣

感情が欲しい

自由に出したいのに

出してしまったら揺らいで失敗の元となる

｢…お願いしたのに申し訳御座いません特攻部隊幹部様｣

遠くからまた別の声が聞こえた

｢良いんだ。気にしなくて大丈夫。構成員の皆でAを支えてやってくれ｣

嫌われても良いでも彼等と一緒に居られなくなるのは何よりも嫌だから

これからもずっと一緒にいる為に…

昇降舵の無機質な音と共に一階に着いた

｢…｣

何も怖い事なんて無いわ

感情が無いに等しいもの

有りと凡百器官を奪われた様に

酷く静かな深海に私の自由は沈められた

｢A！今日空いてる？｣

笑顔で話し掛けてくれるおついちさんに胸が痛くなる

｢仕事以外ならお断りします｣

口が勝手に動いて思ってもいない言葉が紡がれる

指先は違う言葉を打っているのに

[御一緒させて下さい、おついちさん]

｢一緒に行くって事で良い？｣

口を開けば違う言葉が出るから精一杯頷く

｢分かった。終わり次第早めに行くよお嬢さん｣

私の口を縫って欲しい

あの時全部中途半端に感情を奪われてしまうなら、全て奪われてしまえば良かった

私は彼らを傷付ける事しか出来ない