DROWN (ページ26)

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片岸ページ26

｢Aさん、そう言えば昨日珈琲が好きと仰っていましたよね。用意させて頂きました｣

｢あら、そうだったかしら。有難く頂いておくわ｣

昨日は確か兄者さんと居た筈

可笑しな事も有るのね

｢Aさんの好みは忘れたりしませんよ｣

｢その気持で十分嬉しいわ｣

珈琲は酸味の強い物だった

冗談でも私はそんな苦い物頼まないのに

変な感覚

｢…即説、御仕事しましょうか｣

怯えた目、睨み付ける目、恨む目、諦めた目、色々な目が私に向いている

｢…精々有益な情報に成ってから逝くのよ、いいわね？｣

モニターは三原色だと思っていたけれど最近は四原色らしい

｢…やっ、止めてくれ！！頼む！！武器庫の襲撃を企てたのは俺だ！｣

今まで表現しずらかった色を表現出来るようになったとか

｢可愛い顔をしているのに残酷だ…女って生き物は残酷だね｣

科学が如何程進歩しても矢張り人間の縋る物は神秘的な数字では表せない何か、という事は永遠に不思議である気がする

｢仮令どんな目に遭ったとしても私は情報を吐いたりしない｣

身体の持主である私でさえ私の身体には分からない事が沢山あるもの

｢…｣

そう思えば存在の不確かな精神は余計に分からない事ばかりであるのは当たり前な気がする

｢随分と仲間の生命を安売りする組織でしたね｣

｢そうね。一番見苦しいわ。自分の生にいつまでも縋って…｣

その命の蝋燭の火なんて、死神である私が吹き消そうとしているのに

“此の蝋燭の一つ一つが人の寿命だ

お前は命の短い主人を助けたからお前の寿命と入れ替わってしまった

そう言って今にも燃え尽きそうな一本の蝋燭を指す

驚いた男は｢助けて欲しい｣と必死に懇願する

死神は新しい蝋燭を差し出し

「燃え尽きる前にこれに火を移すことが出来れば助かる、早くしないと消えるよ」と言う

男は今にも消えそうな自分の蝋燭を持って火を移そうとするが焦りから手が震えてうまくいかず、

あぁ、消える…

その一言で演者がその場に倒れ込み、演目は終わる”

｢誰だって自分が可愛いもの。仕方ないわよね｣

男の頭頂部の髪を掴んで覗き込む様にして言った

｢…お前は死神か？｣

｢そうね。そう言われているわ｣