此岸 ページ3
｢A、先日の尋問の成果を｣
円卓を囲う様に座る幹部達
｢武器庫の位置、パスコード、構成員の数等は割れているので諜報部隊の兄者さんに情報は渡しました。詳しい事は兄者さんから｣
笑顔で報告を終えるとおついちさんはニヤニヤ顔で見てくるし、それを見て母は溜息を吐く
｢今日中には全て割れるので、今夜弟者に奇襲を任せようかと。先手必勝で｣
｢俺？！おついちさんの方が向いてるって｣
弟者くんが勢い良く立ち上がると机が若干揺れた
｢確かに暗殺部隊率いていますもんね。おついちさん｣
｢駄目。Aと今夜約っ｣
約束なんてして無いわよと言わんばかりの視線を送ると又喜んだ顔をするから本当に強敵
｢娘に手を出す様ではおついち君は減給にするしか無いのう｣
お母様は口元を覆いながらも不敵に笑って居るのが解る
｢酷いですよ！昨日だって確り働きましたし｣
｢茶番はそこ迄にしろ。弟者君、君は今夜襲撃を。要人を殺れないはおついち君、任せたぞ｣
鶴の否…父の一声で締まった会議が終わったのはそれから2時間後
｢何ですかおついちさん｣
｢ドライブでも？｣
余裕な顔、本当に私の事が好きだなと嫌でも自覚する程粘着質
｢今日負傷した部下の家族に連絡をしなければならないので｣
｢真面目だねぇ、部下に押し付けて俺と行こうよ｣
｢部下の負傷は上司の力不足ですよ｣
手を払って管轄下のビルヂングへ向えばむさ苦しい光景
｢Aさんお帰りなさい｣
野太い声の歓迎にももう慣れた
｢負傷した者だけは残って、他の人達は地下にでも行ってきなさい。私の奢りよ｣
負傷した部下一人一人に声を掛け、重傷の者は自ら名簿を探して電話する
｢俺も手伝うよ、こんな強そうな男ばかりの中にAだけ居させられない｣
先程とは真逆な事を言いながら手伝ってくれるおついちさん
｢有難う御座います。お礼に今度ご飯でも｣
｢ご飯なら何時でも行けるからAが良い｣
｢え？｣
変態、その2文字は飲み込む
｢Aが欲しいんだけど｣
｢電話掛けるので一寸すいません｣
無視して受話器を取った瞬間に手首を掴まれた
まじめな顔で
｢A、俺が話してる｣
｢特定の誰かと関係を持つ等、今の私にはそんな余裕有りません｣
それは事実。構成員の一人ひとりに向き合うので精一杯
｢そう。じゃあご飯で妥協する｣
｢血の匂いのする女とご飯でも宜しいのでしょうか｣
｢Aにしか興味無いから｣
幹部らしく無いマフィアね
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作者名：姫乃 | 作成日時：2019年5月19日 23時
