魁岸2 ページ20
夜景の綺麗な港湾都市を一望出来る本部にある私の書斎
楽しみたかった景色も、今では見慣れてしまった
｢…兄者さん、またこの前の男みたいな人だったらどうするのよ｣
｢あんな奴稀だ。普通、Aに会ったら、その首を持ち帰りたいと嘆願する｣
｢厭ァね｣
時間が経つにつれて、灰皿の上に山が出来上がる
｢重役の始末だなんて、組織ひとつ潰す様なものよね。武器関係でしょう？顔が広い人だったら相当な痛手ね｣
｢ああ。替えがきく組織なら又話は別だが｣
そこにあるのは何時もの様な甘ったるい雰囲気ではなく、彼らはAと兄者さんの関係でもなく、悪魔で拷問部隊幹部兼総合幹部令嬢と諜報部隊幹部の2人であった
｢使い捨てだったら可哀想ね｣
｢本当ご愁傷様という所か｣
私たちは替えがきかない存在、共通認識である。其れ程私達はお互いを尊重し合っていると思ってもいいだろうか
｢然し其れにしても、Aを失ったら組織壊滅に等しいのによく立たせるなァ、尊敬するぜ｣
｢まァきっと、何か知らぬ間に身体に加工でもされているかも知れないわ｣
他愛も無い話をし乍も段々と作戦が練られて行く
｢…そろそろ休むか、お嬢さん｣
｢えぇ、そうね｣
二人で倒れ込む様にソファに横になった
｢A、お前本当に作戦決行するのか？｣
｢如何して今更？｣
大きくて綺麗な手が私の髪を梳いてくれる
擽ったくも気持が良い
｢…本当にAを失うのが怖い。ミスしたら、とか色々考えてしまう｣
｢死ぬのは怖くないけれど、組織が心配で死に切れないわ。それに総合幹部だって言っても父親よ。一応愛情位有るわ｣
言わないだけで、結局あのバーでの男の始末の時も特に腕の優れた者をバーテンダーとして派遣していたらしいし、優秀なスナイパーも、嘱託医も居たらしい
結局色々愛されている
そう思うと笑みが零れてしまう
｢…大丈夫よ、私は寵姫なのだから｣
｢Aはうんざりする程愛されているもんな｣
兄者さんの優しい声が聞けたから、今日はゆっくり眠れそう
｢…好い加減Aの書斎に寝台を置いて欲しいもんだ｣
｢そうね、余りにも自宅に帰れなくて最早自宅同様だから欲しいわ｣
夜明が近い
愛する人の胸に抱かれて眠れるなんて何程私は幸せなのか痛感する
｢…お休み、A｣
｢兄者さん、お休みなさい｣
堪らなく幸せで、堪らなく好きで、私は自ら進んでキスをした
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作者名：姫乃 | 作成日時：2019年5月19日 23時
